引っ越しのため、家の家具や家電を一斉に買い替えることになり、リサイクル業者に見積もりをお願いしたら、思っていたよりも安くて若干へこんだ。

自慢じゃないが我が家の家電は、冷蔵庫、洗濯機、テレビなどほぼ全てが2009年モデルの限りなく新品に近い中古品である。
しかしながら、業者のおじさんがはじき出した金額はことごとく買値の1、2割、よくても3割。やや肩を落としながらおじさんと今後の買い取りスケジュールについて話していると、ふと、ドラゴンクエストのことを思い出した。

去年もニンテンドーDSで発売されて話題を集めた人気ゲーム「ドラゴンクエスト」の中では、使い終わった武器や防具を買値の半額で買い取ってくれる。それがたとえ、冒険序盤にスライムと互角の戦いを繰り広げたときに使った「ひのきのぼう」であっても、キメラなんかが吐きまくる「もえさかるかえん」から幾度となく身を守ってくれた「ドラゴンシールド」であっても、半額買取である。ドラクエ以外でも、ファイナルファンタジーシリーズなどの主要なロールプレイングゲームの中では、半額買取がスタンダードになっていることが多い。現実社会と比べると、これはかなり良心的な買取率であるといえそうだが、この買取率はどのようにして決まったのだろうか?

ゲーム関係者に聞いてみたところ、「おそらく、慣習的なものだと思います」とのこと。
1981年から発売されているロールプレイングゲームの元祖的存在「ウィザードリィ」シリーズに武器屋においてすでに半額買取は実施されていたらしく、そこから慣習的に広まっていった可能性が高いようだ。「ゲームにもよりますが、お金を稼ぐ作業はモンスターとの戦闘を繰り返す単純作業になるので、武器防具の買取率を高めにしてゲームの本編に集中してほしいという背景もあったかもしれません」とのことで、確かにドラクエはモンスターが持っているゴールドがやたら低く、半額買取はとてもうれしかった気がする。

また、リサイクル業者のおじさんによると、「マンションの外に運んだり、店舗の倉庫まで輸送するときの手間が結構かかり、その手間賃が買取値から差し引きされています」とのこと。ゲームの場合、主人公が店まで持ってきてくれるので、輸送コストがかからず、高値買取に繋がっている可能性があるかもしれない。

ちなみに、「家電の中でも冷蔵庫や洗濯機といった大型のものは移動させるのが大変なので、テレビなど比較的小型の家電に比べると買取率が低くなる傾向にあります」とのこと。ドラクエにおいても「あつでのよろい」や「おおかなづち」といった重そうな武器防具があるが、これも半額で買い取ってくれる武器防具屋はやはり良心的といえるだろう。


業者さんのトラックに乗せられていった家電たちを見送りながら、彼らが魔王から世界を救うことは多分ないだろうが、主婦の皆さんを日々の雑用から救ってくれることを願った。
(珍満軒/studio woofoo)