昔の人は、自宅でできた生ゴミは家の庭に埋めて処理していたそうだ。今でも、そんな人は少数派ながらいるそうで。
……素晴らしい! これって、完全にエコ。肥料になったりするから土に良い。その上、ゴミの量も減らせるし。
でも、なんでもかんでも土に埋められるわけではない。有害な物を埋めてしまうと植物にも悪影響が及ぶので、徹底した分別が必要である。

そして、スーツ。「埋めよう」だなんて、1度さえ思ったことはない。しかし、オンワード樫山が開発した『バイオテックスーツ』は平気なのだ。何年かして、万が一「もう、着ることがない」という時期が来たとしたら、率先して土に埋めていただきたい。心配しなくても、イイ感じで土に還るから。

画像を見ていただければわかるとおり、ファッション性の高いスタイリッシュなスーツとなっているが、部分部分にズームアップしてみると、従来品とは異なる施しがそこかしこにされている。
まず、ファスナーと留め金部分には金属が一切使用されていない。
ボタンには、ポリエステルなどではなくタンパク質を原料としたものを。縫製糸には天然繊維であるシルク糸、コットン糸が。表地は生分解性のある天然繊維のウール100%となっている。

こうした工夫によって、洗練を極めたフォルムでありながら“エコロジースーツ”としての機能も併せ持つことに。土中で、バクテリアの酵素が製品の全てを水と二酸化炭素に分解するのだ。結果、ほぼ1年後にはすべてが土に還る。

それにしても「スーツがご不要となった際は、土に埋めてください」だなんて、あまりにも大胆。こんなスーツを開発したきっかけを、同社に伺ってみた。
「昨年から経営の重点施策の一つに環境経営を掲げています。調査によると、衣料品のリサイクル率は14%と他の生活用品に比べて低く、年間約210万トンの衣料が廃棄・埋め立てられております。そこで、自然界に還る衣料品を販売することで、衣料を通じた環境保全に少しでも繋がればと考えました」

ちなみに、この『バイオテックスーツ』は6月2日より発売されており、価格は61,950円(税込み)。

言うまでもなく、このようなスーツは世界で初めて製作されたもの。
しかし、天然素材だけを使っているため大量生産は難しい。今夏の生産着数は258着で、伊勢丹新宿店、日本橋三越本店のみの限定発売となっている。
だが、このスーツによって様々な可能性が考えられる。この技術を、他のあらゆる衣料に落としこむ。そんな時代が、もうすぐ訪れるのかもしれない。
(寺西ジャジューカ)
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