不意に、普段の生活では滅多に出さないパワーを必要とさせるタイミングがある。
たとえば、塩辛の瓶のフタを開けようとする時。
いくらやっても開かない。でも、食べたい。歯を食いしばって踏ん張る、あの瞬間こそ“火事場のクソ力”。

他には、どんな時がある? たとえば、料理をするとき。いかにも「硬いだろうな」というような食材を包丁で切ろうとして、予想通り切れない。そこで、思いっ切り力を込める。
でも、パワー全開にするのも怖い。力が変な方向に作用して、刃があらぬ場所に接触したとしたら……。包丁慣れしてない人種は、思わずこんな躊躇をしてしまうんです。

そんな時、この包丁がいいかもしれない。株式会社レーベン販売が10月1日より発売している『かぼーちょう』(税抜き3,200円)が、きっと打ってつけ!
これはその名の通り、「かぼちゃみたいな硬い食材も“スパッ!”と切れる」、そんな思いが込められた新包丁である。

商品開発については、社に寄せられた声がキッカケとなった。
元々は業務用の包丁を製造していた同社だが、ある調理師の方から「一日に何百人もの食材を包丁で切る下処理は重労働。特に柄が細いと手も痛くなるし、力も入りにくい」という声が寄せられたのだ。
そこで、刃と握りを研究した新しい包丁の開発に取り組み、出来上がったのが『かぼーちょう』。かぼちゃ以外にもトウモロコシ、さつまいも、たくわん、サラミ、ボンレスハムといった難敵たちに滅法強いそうだ。

しかし柄が太くなっただけで、そんなに切れ味抜群になるとは思えない。他にもヒミツがあるんじゃないのか? その辺りを伺ってみた。

「柄の位置を通常の包丁よりも高くしました。すなわち力点が高くなり、包丁に力が伝わりやすくなったんです」(担当者)
柄の造形は太くしただけではなく、ツバ付きの楕円形に。これだと前滑りしなくなり、手の中で回らない。

と、四の五の言ってても始まらないだろう。『かぼーちょう』を、実際に使ってみました。

まず、この包丁を手に取ってみる。
これが、妙に可愛いのだ。“ずんぐりむっくり”な、独特のフォルムに心奪われる。

そして、実際にかぼちゃと対峙。手始めに、かぼちゃの表面に包丁の“アゴ”の部分を当ててみた。そうして切れ目を作り、そこに刃先を入れて力を込めた。
何だろう、この感覚は。
拍子抜けしてしまいそうになるほど刃がスルスルと進んでいく。気がつくと、かぼちゃは真っ二つになっていた。かぼちゃに楽勝。

次にチャレンジしたのはトウモロコシ。結果、コチラにも秒殺。果汁を溢れさせながら、断面を露にする野菜を見るのは気持ちがイイ。


このように、非常に頼れる『かぼーちょう』。その特長ゆえ、利用が期待されているのは女性、握力が弱まったお年寄り、リウマチをお持ちの方などである。

もちろん、それ以外の方もガシガシ使ってみたらいい。なぜなら、この包丁には同社の熱い思いが込められているから。
「今、若い方々は文化包丁しか持っていないことが多いですよね。それだと、硬いものを切るときに、刃の先端の部分だけを使うことになります。しかし、かぼちゃなどを切る場合は、刃の全体を使う切り方が有効なんです」(担当者)

文化包丁で硬いものを切ろうとすると、刺さったまま抜けなくなる場合がある。だからこそ、この『かぼーちょう』の刃には形状を一直線にした“菜切包丁”の型が採用された。
「オーバーに言うと、“菜切包丁の復権”を目指しています」(担当者)
なるほど。そういえば、私も文化包丁しか持ってないな……。世相を反映した、見事な裏テーマではないか。
(寺西ジャジューカ)