レッサーパンダの繁殖数では国内有数を誇り、全国からコアなレッサーパンダ好きを集める動物園が、福井県鯖江市の西山動物園だ。2008年4月に動物園から脱走したことで話題となった、やんちゃなミンファちゃん(メス)が暮らすのもここ。


そのミンファちゃんが今年6月28日に初めて出産、双子のレッサーパンダの親となった。市民からの公募を経て、10月1日の選考会で子どもたちの愛称が決まったのだが、そのうち一頭の愛称の由来が、筆者の胸に引っかかってならないのである。

双子のうち、オスの子レッサーパンダの愛称は、京都の人が応募した「ファファ」ちゃん。その由来は「ミンファのファから」だと、動物園のウェブサイトには書かれている。これはなかなかしっくりくる命名だ。
気になるのは、メスの子レッサーパンダの愛称である「ミンミン」ちゃん。その由来は何と、「今年の夏は暑く、セミがよく鳴いていたから」。
……はい? ここはどう考えても「ミンファのミンから」じゃないですか。というか、哺乳類の名前に昆虫の鳴き声って、ワンちゃんに「ニャンニャン」と名付ける以上に意味わからなくないですか。

西山動物園に問い合わせてみると、「はい、ミンファのミンというわけではありません。応募してくれた方の書いた由来がおもしろかったので、採用させていただきました」と、迷いのない答え。
それにしても、セミの鳴き声にどんな意味が……。

「ミンミンという愛称から、特に暑かった今年の夏のことを思い出してもらえればと考えています。時の話題をもとにレッサーパンダの愛称をつけることは、結構多いんですよ」

では、他にはどんな時事ネタの愛称が?
「小泉純一郎氏が首相になった時はシュンシュン、柔道の井上康生氏がオリンピックで金メダルを取った時はコウセイという愛称が、誕生したレッサーパンダにつけられました」

なるほど、そう考えるとミンミンは、確かに2010年を代表する素敵な愛称であると言える。何より、元首相や金メダル選手と、由来の上では同列というのも素晴らしい。きっと立派なレッサーパンダとなってくれるに違いない。

西山動物園ではミンファの子たちの他に、さらに2頭のレッサーパンダが誕生しており、あわせて愛称が募集された。採用となった愛称は、やんちゃに育ってほしいという由来をもつ「ヤンヤン」ちゃんと、心と心が通じてほしいという由来をもつ「シンシン」ちゃんだ。なお、彼らの両親の愛称には、ヤンもシンも出てこない。

4頭の愛称は、10月10日~11日に行われた、動物園25周年を記念する式典「SABAE レッサーパンダ サミット2010」のうち、11日の命名式で正式に名付けられた。応募総数110の中から選ばれた4人の名付け親と、他にもフランソワルトンの名付け親7人が呼ばれ、多くの観客が見守る中、賞状やレッサーパンダグッズなどを受け取ったという。
この日、赤ちゃんレッサーパンダの一般公開もスタートした。大きくなったとは言え、まだウサギぐらいの大きさだ。「4頭とも多くの来園者にとまどうこともなく、元気に動き回り、鯖江市民をはじめ、県外からわざわざこの日をめがけて来られたファンの方々の注目を集めていました」と担当の方。
この日の入場者は1600人ほどと、動物園としても珍しいほどの大賑わいだったそうだ。

多くのファンに祝福された、レッサーパンダの赤ちゃんたち。サミットを逃したあなたも、ぜひとも現地でそのキュートな姿を確認し、あわせて今年の夏への思いにふけってほしい。
(清水2000)
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