ところで、オルゴールの選曲って、どのように行われているのだろうか。
「オルゴールには大きく分けて4つのパターンがあります。1つ目は『学校の校歌』。日本全国の小中学校のPTAなどからの依頼があり、オルゴール用に編曲するんですが、この時期は特に注文が多いんですよ。また、最近多いのは、廃校になる学校の卒業生からの依頼ですね」
2つ目は、クラシック系の定番曲。3つ目は、レコード会社の「CDの初回限定版」のオマケとしての依頼だという。
そして、4つ目は「流行歌」。JASRACに登録されると、手続きをするそうだが、選曲基準は? オリコン○位以内とか、あるのだろうか。
「特に基準はなく、『売れそうな曲』ですね」
基本的には「ゆっくりした曲がオルゴール用に編曲しやすい」というのは納得だが、意外とオルゴールで見かけるのは、「X JAPAN」や「B'z」の曲! 激しそうなイメージなのに、なぜ?
「X JAPANやB'zは確かに多いですね(笑)。編曲はそう大変でもないんですよ。実はバラード系の曲が多いので」
そういえば、「EXILE」の曲などもオルゴールに多い。一見ヒップホップカルチャーの顔をしているけれど、曲調自体は「狩人」みたいなニューミュージック系演歌に近いもんなぁ。
逆にオルゴール用の編曲で難しいのは……?
「ロックなど、タンタンタンというリズムで同じ音が続くものですね。たとえば、『ドドド』などの連続音があると、標準的な『18弁』のオルゴールにおいて、3弁も同じ音に使ってしまうことになるので、苦手なんです」
??? 同じ音に3弁も使うというと?
「そもそもカード式のオルゴールでは音階が『ドレミファソラシド~』の2オクターブほどで固定のものですが、カード式でないものは、音階がドレミファソラシドの固定ではありません。たとえば、18弁オルゴールは18の音を出せるタイプで、曲から18個の主要な音を拾ってきて編曲します。この場合、18の音において音符をフルに使って出す理想的なのは、2~2.6オクターブにおさまる曲。この中におさめるように編曲するわけです。また、連続音などは、音符を間引いたり、タイでくっつけるなどで使用する弁を減らす工夫をします」
18弁より多い23弁の曲には、学校の校歌(2.5~3オクターブ)があるそうだ。
ちなみに、今オルゴールで人気の流行歌とは?
「GReeeeNの『キセキ』はロングセラーですね。また、木村カエラの『Butterfly』も人気です。Butterflyは編曲がいいですよ。オルゴールは贈り物として使われることが多く、結婚のお祝いとして定番になっています」
日本電産サンキョー商事のものだけでも、過去に何千曲、何万曲もあるというオルゴールの世界。その中で、「流行歌」ながらド定番曲になっている「いとしのエリー」などは、やっぱりスゴイ曲です。
(田幸和歌子)