誰もが知っているアンパンマンの主題歌「アンパンマンのマーチ」は、その軽快なメロディとは対照的に、「何が君の幸せ~」で始まる歌詞は、アイデンティティーを求めてさまよう若者の典型的な悩みを象徴しているかのようで、深い。

アニメーションとメロディでごまかされがちだが、「アンパンマンのマーチ」以外でも、よく聴いたら実は結構深い歌詞のアニメソングがあるのではないかと思い、いろいろと調べてみた。
その結果を今回はご紹介したい。

なお、作詞者の著作権を保護するため、歌詞の引用は最小限にとどめている。そのため、奥歯に物が詰まったようなあやふやな表現が出てくることが多々あるが、その辺はご了承いただきたい。

まず意外と深いアニメソングの代表格として、アルプスの少女ハイジの主題歌「おしえて」を紹介しないわけにはいかない。この歌の歌詞は、おそらくハイジであろう高原の少女が、おじいさんに様々な質問をぶつける、あれである。その質問は「口笛はなぜ 遠くまで聞こえるの」、「藁の中はなぜいつも暖かいの」といった、素朴かつ本質的な質問であり、深い。
もしあなたがおじいさんだったら、「さあ、そんなことはもういいから、こっちにきて温かいスープをお飲み」などとはぐらかすことなく、ちゃんと質問に答えることができるだろうか? 筆者は無理である。

次に紹介したいのが「クレヨンしんちゃん」。子供向けアニメだと思われがちだが、特に『オトナ帝国の逆襲』『戦国大合戦』などの映画は大人も泣けるとの評判があり(というか実際に数々の映画賞を受賞しており)、そのクオリティを侮ってはいけない。このアニメではしんちゃんの大好きなオモチャとして、「カンタムロボ」といういかにもアレな名前のロボットが出てくるのだが、「立て! カンタムロボ」という、これまたアレなタイトルのテーマソングがある。この歌の歌詞には、「どんな時間も眠くはない テレビの後も終わりじゃない」というフレーズがあり、いついかなるときも悪の襲来に備えなければならない正義の味方の哀愁が、平明な言葉で表現されている。また、「パワー全開の正常合体」という、捉え方次第でエロスを感じる意味深な歌詞もあり、クレヨンしんちゃんっぽさを醸し出している。


もう少し年代をさかのぼって、筆者が大好きだったアニメ「キン肉マン」から、ややマニアックな一曲を紹介したい。このアニメに登場するロボ超人・ウォーズマンのテーマソング「悲しみのベア・クロー」は、彼のファイトスタイルに勝るとも劣らないインパクトのある歌詞である。「ボン、ボン、ボン、ボン」というマイナーコードの男性コーラスとともに、「俺のことをロボ超人だと笑わば笑え」というウォーズマンの語りから始まるこの歌の歌詞は、ロボット(正確には機械超人)と人間との間に生まれるという特異な境遇のために、壮絶な人生を送ってきた彼の孤独な悲しみで満ちており、当時小学生だった筆者も子供ながらに、彼の人生に思いを馳せたものである。

ちなみに、このウォーズマンの実力を最初に見いだしたのはロビンマスクだが、彼のテーマソング「虹色の騎士」の歌詞は「飛び出す華麗なテクニック リングの紳士と人は呼ぶ」などのきらびやかな言葉で飾られており、イギリスの名門・ロビン一族出身のエリート超人にふさわしい内容となっている。

個人的な趣味のため、かなり偏った年代、ジャンルからの紹介となったが、これ以外にも「深い」アニメソングはたくさんあるはずである。筆者は今後も、この探求を続けていきたいと思っている。

(珍満軒/studio woofoo)