幼い頃、テレビや映画等で目にしつつも、本業が何かわからないまま接していた有名人は結構いた。
例えば、デヴィッド・ボウイ。
中学生くらいまで、あの人のことを私は“俳優”だと思っていた(言うまでもなく、本業はミュージシャン)。
こんな例は、たくさんある。板東英二がプロ野球のピッチャーだったなんて知らなかったし、ストロング金剛なんてお笑い芸人だと決めつけていたから。

そして、蛭子能収。初めて目にしたのは、恐らく『教師びんびん物語』のバーテン役だった。当然のごとく、役者だと認識する。あの独特の口調が評価されている、替えの効かない性格俳優だと……。
それから数か月後。蛭子さんの、これまた独特のイラストに初めて接し、唯一無二の評価を獲得している“漫画家”が本業であると判明した。

以来、世の中に蛭子さんのイラストが広く浸透していることを、身に染みて知るようになる。やたらと見るのだ。受験生向け教材を扱う某企業の広告だったり、日曜昼に放送されていた『スーパー・ジョッキー』(司会・ビートたけし)の番組内などで、あのイラストが登場しまくりだったから。


そんな蛭子作品の展示会「蛭子リアリズム」が、ご本人の故郷である長崎で9月4日まで開催されているらしい。
そして同イベントを記念し、株式会社コスパが蛭子能収グッズの製作に着手! 蛭子さんでしかない独特のイラストが描かれたTシャツ、エコカップ、マグカップが、めでたく発売の運びとなった。

「蛭子さんの漫画を読んでいて、非常に印象的なのが“汗だくのサラリーマン”の描写でした。今回はそんな汗だく感を意識し、蛭子作品の中からイラストをチョイス。グッズのデザインに採用しました」(同社・担当者)

たしかに、汗だくテイストは豊富だ。
『サングラスの男Tシャツ』(税込み3045円)には、カラフルなスーツを着たサングラスの男をプリントした。当然、額と頬には冷や汗がタラリと流れている。シンプルでありながらも、存在感が飛び抜けた一枚ではないだろうか。
『珈琲から逃げる馬マグカップ』(税込み840円)のイラストは、深すぎてもうコンセプトがよくわからない。コーヒーカップから必死に逃げる馬の、その顔部分が汗だくの青年になっている。一方、冷や汗をかいた中年や女性たちの頭を踏みつけている馬部分の下半身。なんだ、このシチュエーションは。


他のグッズも、興味深い。『えびスカルTシャツ』(税込み3,045円)は、なぜだか無性に怖い。妙に不吉なことを連想させる代物で、異様に不気味。蛭子能収の描くスカルは、他の定番スカルと一線を画す模様。
『女の顔エコバッグ』(税込み1,575円)には、連なる女の顔をプリントした。感情の判読が難しい彼女たちの表情は、エコバッグのカラーであるイエローとの相性が抜群だ。

「蛭子さんは人気のある作家さんですし、『ガロ』の頃から活動している歴史の深さもあります。そんな方のグッズには非常にコアなニーズがあると当社は判断し、今回のコラボとなりました」(担当者)
コアなニーズがあるであろう“蛭子能収グッズ”は、既に「蛭子リアリズム」の会場内で販売されている。そして一般発売は、コスパのホームページにて10月中旬からスタート。

それにしても、今回の展示会は実に興味深い。会場には、蛭子さん直筆による“汗だくの青年”が描かれた競艇ボート「エビ号」も展示されているらしいのだ。“ギャンブル好き”と“アーティスト”という同氏の二つの側面を表現した、興味深い作品ではないか。


今回は“奇才アーティスト”蛭子能収を体感する、いい機会だ。
(寺西ジャジューカ)
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