最寄りの空港は徳欽から約200km南の、香格里拉(シャングリラ)という町になる。もちろん日本から直行便は飛んでおらず、雲南省の省都・昆明などで乗り継ぎが必要だ。午前8時、市内バスターミナルからバスに乗り込み、徳欽に着いたのは8時間後の16時過ぎ。かなりの割合で道路が舗装工事中で、山越えの悪路をバスは車体を揺らしながら進んだ。
徳欽の中心地は昇平鎮と呼ばれる谷間の集落。
到着したのは日曜午後。午前中にあるミサも終わり、閑散とした雰囲気だった。はるばる、そして一方的に来てみたものの神父のヤオさんは外出中で、境内へ入る扉には鍵がかけられていた。ワインを分けてもらう以前に、見学もできない恐れが漂いはじめた。門番の年配男性も「今日は無理だね」と全く取り合おうとする気配はない。
教会近所の家々をあたり、神父さんの携帯番号を教えてもらう。そして電話。神父さんはまだ出先から戻れないということなので、次は合鍵を持つ管理人のおばさんを探し出す。約1時間後ようやく合流し、何とか境内へ入ることができた。
教会はバジリカ様式と中国式の屋根が備わった4層の塔を持つ。
通されたのは「接待室」と書かれた部屋。まさかと思ったが、日のあたる窓際に置かれたスプライト1.5Lのペットボトル2本が、じつは赤ワインだった。残りのワインはポリタンクに入れられて日陰に置かれていたが、やはり保管状態が気になる。
何はともあれ「分けてもらえますか?」とうかがったところ、二つ返事でOKをもらった。これで任務完了。ペットボトル1本で10元(約120円)というお求めやすい価格だ。
(加藤亨延)