そして、今度は歯科医院。東京都江東区の「ハーツデンタルクリニック」では、なんと今年から『ハローキティ』をマスコットに採用しているそうなのだ。
もう、文句なしの可愛さ! しかし、その舵の切り方はあまりにも大胆。少しだけ面喰ってしまったのも事実なわけで。そこで、このような試みに踏み切った理由について伺ってみた。お答えいただいたのは、同医院をプロデュースした株式会社デンタル・マーケティングの寳谷光教(ほうやみつのり)さん。
「欧米諸国に比べると、日本は『痛くならないと歯医者に行かない』という傾向があると思います。そこで、『歯科医に行きやすくなる為には、どうしたらいいか?』を考えました」
歯科医に言わせると、「何もない時にも、検査に来てもらいたい」「3ヵ月に1度は歯のクリーニングをした方が良い」というのが本音だそう。しかし、何もない時に歯医者にはなかなか行かないのが我々の現実。そんな状況を変えていくため、同医院では愛らしいキャラクターをマスコットにすることに決定!
その中でも、なぜハローキティなのか? これにも理由がある。
「世の中にはたくさんのキャラクターがいますが、『好きな人は多いけど、嫌いな人もいる』というものが多いんですね。
また同医院では、女性に好かれるキャラクターを意識して探していたという。そうすることによりお母さんが歯科に足を運び、それがお子さんを歯医者に連れてくる結果にもつながるわけだ。
ただ、一つだけ気になることがある。これ程の大胆な路線変更。もしかしたら、反対意見も多かったのではないか? 「歯医者って、そういう所じゃない!」みたいな意見が……。
「『医療に対する信頼感が損なわれてしまうんじゃないか?』、『面白おかしくなってしまうんじゃないか』と不安視する声が社内にあったのも事実です。ただ、『信頼は始めからあるものではない。続けていくにつれ、勝ち得ていくものではないのか?』という考え方の元、最終的には一致団結いたしました」(寳谷さん)
そしてもう一つ、サンリオ側にも複雑な事情はあるだろう。そう簡単に、許可が下りたとは思えなくて……。
「サンリオ様の方でも、歯科業界との連携は初めての試みで心配されていたと思うのですが、最終的にはコンセプトをご理解していただけました」(寳谷さん)
……といくつかの困難を乗り越え、無事にハローキティがマスコットとなった「ハーツデンタルクリニック」。建物内に入ると、様々な場所でキティちゃんが我々を出迎えてくれる。
「まず、入口にハローキティが描かれています。また、診療台や待合室、トイレなどのチェアの前では、必ずキティちゃんがこちらを見つめています。VIPルーム内にもハローキティはいますし、シャンデリアもキティちゃんの色(白とピンク)をイメージして製作しました」(担当者)
医院の外観からして、キティちゃんの愛らしい顔がいくつも描かれてるし、そのイメージカラーであるピンクと白によりキュートな建物に仕上がっている。こんな歯医者さん、見たことない!
当然、反響も数多く寄せられた。
「『歯医者さんじゃないみたい!』、『こういうコンセプトのホテルみたい』、『これなら知り合いに紹介できる』といった、たくさんのお声を頂いております」(担当者)
リアクションは上々の模様。新しいお客さんも増え、新規の外来は以前の7倍の数となったという。そして割合的には、やはり女性の方が多い。狙い通りの効果が表れているようだ。
ただ単に、ウケ狙いでキティちゃんをマスコットにしたわけではない。そこには強い意志と信念があった。
(寺西ジャジューカ)