今月12日、ディズニーランド・パリが20周年を迎えた。同所はパリ郊外マルヌ・ラ・ヴァレに位置し、カリフォルニア、フロリダ、東京に続き4番目に開園したディズニーリゾートだ。
ディズニー作品として映画化された多くの童話の舞台となったヨーロッパに位置する唯一のディズニーリゾートであり、首都パリを中心とした地域圏、イル・ド・フランスにおける2011年度観光客数ではルーヴル美術館やエッフェル塔などをおさえて首位になった。

このようにフランスでも人気のディズニーランドだが、東京ディズニーランドを訪れたことがある日本人観光客の話を拾っていると、パリのディズニーランドはそこまで“夢の国”ではないという。一体どのような場所なのか。比べてみた。

まずパリは、ディズニーランド・パークと映画をテーマにしたウォルト・ディズニー・スタジオ・パークという二つの施設から構成されている。テーマは違うが、二つの異なるパークから成る点は日本と同じだ。また名称に「パリ」と冠しているが、実際にあるのはパリ市内ではなく、その郊外のセーヌ・エ・マルヌ県。「東京ディズニーリゾート」と呼称されるが、東京都ではなく千葉県にある日本の状況とも似ている。

さて、パリからのアクセスは、日本のJR京葉線舞浜駅に相当するRER(首都圏高速交通網)A線、マルヌ・ラ・ヴァレ・シェシー駅が最寄りだ。両線ともに路線のイメージカラーは赤。列車から降りると、駅構内は若干汚れており、夢の国へ来た雰囲気はまだない。

園内の客層は家族連れが圧倒的だった。
日本のようにカップルや友達同士は少なく、ほのぼのとした雰囲気。傍らではりんご飴も売られており、夢の国というか縁日というか、日本人的にはさらに落ち着いてしまう。休日でも人気アトラクションの待ち時間は1時間もかからず、それほどストレスもたまらない。またフランスの国民性であるおおらかさ(いい加減さ)は、ディズニーリゾート内でも遺憾なく発揮されており、日本のキャストと比べれば、はるかにフランスのキャストの身のこなしはマイペースだった。つまり、日本のディズニーリゾートに慣れてしまった日本人には、とことんディズニーらしくないのだ。しかし、数々の童話が作られた本場の人たちだけあって、ディズニー風中世の服装で園内のゴミなど拾われると、そこは作品に登場する下女がいるようなリアルさがあった。

日本と比べれば“おおらか”なディズニーランドだが、日本同様、同施設が地域へ与えた影響は大きい。仏ディレクト・マタン紙によれば、ディズニーランド・パリは5万5千人の雇用を生み出し、1987年には約5千人だったディズニーランド・パリに隣接するヴァルドーロップ地区の人口を、現在2万8千人まで押し上げたという。日本と同じく、ディズニーランド・パリは地域経済を牽引する重要な役割も担っている。

今年のパリの20周年に続き、来年は東京ディズニーリゾートが30周年を迎える。また数年後には上海でも開園予定だ。地域色とは無縁のように思えるディズニーの世界で感じる、各地域の違いを体感することも、各国のディズニーランドを訪れる楽しみ方の一つといえる。

(加藤亨延)
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