日本初のタクシー会社が東京・有楽町数寄屋橋にT型フォードを引っさげて登場したのが1912年、今からちょうど100年前のこと。

今やすっかり社会の重要な交通インフラとなったタクシーはそのサービスも進化させている。


都内最大手のタクシー・ハイヤー会社の日本交通はこの5月から「陣痛タクシー」なるサービスを始めた。妊婦が出産予定日、かかりつけの病院、乗車場所などを事前に登録することにより、急に産気づいても電話一本で迅速に病院まで載せていってくれるサービスだ。開始間もないにも関わらず、すでに登録は数千人にも及び毎日相応数の利用があるという。

また「キッズタクシー」も同社の人気サービスだ。両親の送迎が難しくとも、子どもを安心して任せられる経験豊富なドライバーが送迎をしてくれるというものだ。事前登録は必要だが、子どもに現金を持たせる必要がない支払い方法があったり、チャイルドシートを用意してくれたりとサービスは手厚く、重宝するリピーターは多い。


その他「観光タクシー」「介護タクシー」など次々に新しいサービスが生まれているが、その背景には何があるのだろうか。

「技術の革新の影響が大きいですね」

そう答えてくれたのは日本交通の川鍋一朗社長だ。

「弊社では2004年に電話システムをデジタル化したのですが、それにより全車に配備しているGPSと連動させ、すべてのタクシーの存在地が瞬時にわかるようになりました」

どこにどのタクシーがいるのかを本社で把握できるようになったことにより、きめ細かなサービスができるようになったのだという。

「一見どうということのない配車に見えても、お子さまやご年配の方、介護が必要な方をお乗せする場合は経験豊富なドライバーの方がいい場合があります。弊社ではエキスパート・ドライバー・サービスを設けているのですが、デジタル化によりニーズに合わせた迅速なマッチングが可能になりました」

もちろんスマートフォンによる配車アプリができたのもデジタル化のおかげだ。

タクシーの誕生から100年が経ち、利用者にとっての利便性はますます高まっている。
またタクシー生誕100周年のイベントも予定され業界的にも盛り上がりを見せようとしている。

しかし長引く不況に加え高齢化の進行、就労人口の減少によりタクシー業界の将来は必ずしも明るくはないのではないか。

「実は1970年をピークにタクシーの輸送人員は減少を続けてきました。それは公共交通機関の発達やマイカーの普及が原因でした」

「しかし最近は不況や飲酒運転取締りの強化もありマイカーの保有者も減少に転じてきています。またご高齢になると運転が難しくなったり、バスや電車での移動が大変になることもあります。このことによりタクシーのニーズはどんどん高まって行くと思いますよ」

「実際過疎地では廃線になる路線バスもでてきており、そういう地区ではタクシーが不可欠な交通インフラになってきています。
次の100年はタクシーの役割が見直される時代になってくるでしょうね」

ニーズの高まりとともにサービスも向上してくれるのは、利用者にとってはありがたいこと。贅沢という先入観を捨て、新しいサービスをチェックして上手なタクシー利用者になりたいものですね。
(鶴賀太郎)