「怪しい者じゃないです」と、マンションのドアをピンポンするエレキング。チャラい口調で掛け合いするカリスマ美容師のマグマ星人とババルウ星人。
テンペラー星人は名門私立小の転校生で、ゼットンは、「ゼットン君」と、“君”付けで呼ばれる下っ端ヤンキー(でもホントは超強い)……。

ウルトラシリーズに登場する怪獣や宇宙人が、そんなコントを繰り広げ、昨年秋から今年の春までtvk やチバテレビなどのローカル局で放送され話題を集めた番組、『ウルトラゾーン』。

他にも着ぐるみではなく市販のソフビや怪獣消しゴムを使って手で動かしながら、「どうも〜〜」と漫才させる、チープなおふざけ感でお届けの「怪獣漫才」などもあるいっぽうで、ザラブ星人と地球人との交流を描いたり、メフィラス星人が再び地球人に問いかけたりする本格的なドラマパートもあったりと、とにかくバラエティに富んだ作品だった。
元々の怪獣の特徴やエピソードからの引用など、番組全般にわたってウルトラ愛にあふれたツボが随所におさえられていたりもする。

そんな番組の魅力をそのまま詰め込んだムックが出ている。
『ウルトラゾーン公式ガイドブック』(ミリオン出版/3200円)。
「公式」と銘打つだけあって、オールカラーで写真も満載。番組の内容紹介とともに、スタッフの座談会や未公開シナリオ、デザイン画などが収録され、資料的価値も高い。その一方で、表紙の白く縁取りされた怪獣の写真はベタベタ貼られたシールを彷彿させてくれたり、「すごいぞ! 77大怪獣メーワク行為!!」「これでキミもウルトラゾーン博士になれる!」などといった見出しが派手に踊る児童向け雑誌の扉風のデザインのページがあったり、遊び心も随所にみられる。
「ウルトラマンを扱った本などのオマージュでもあって、本そのものを見るだけでもニヤリとできるようなデザインになってます」

本書の特徴のひとつが、上記のコントを中心とした「怪獣特捜隊」、「空想特撮ドラマ」、そしてラゴンやケムール人、M1号が毎週シュールなコント仕立てで登場した「ウルトラゾーンチャンネル」という番組の柱となった3つのパートに分けられて構成されているところ。
出版元のミリオン出版担当者によれば、
「それぞれのパートで、番組の制作スタッフも分れていましたから、これを読んで『そうだったのか』と、お互いに思われたりもしたようです」
とのこと。

そしてこのムック、判型がA4サイズと比較的大きめなのも特徴。

「『公式』ということで、豊富な写真が使用できましたし、しかもオールカラーですから、やはりこのぐらいのサイズでないともったいないというところもありました」

嬉しいのがCM前後に表示される、なんとも味のあるタッチのセンスあふれるアイキャッチが収録されているところ。運動会の二人三脚に一匹で参加するペスターや、大坂城をバックに修学旅行生と一緒にピースするゴモラ、「白鳥の湖」のバックダンサーとして集団で踊るポール星人などなど、吹き出すカットの連続だ。

番組ファンにとってのメモリアル&資料としてはもちろん、再放送や発売中のDVD・ブルーレイで作品を楽しむことができるので、番組未見の人も、ガイドブック片手に見れば、楽しさも倍増かと。

「これから30分、あなたの目はあなたの身体を離れて『もしもこんな所に怪獣が現れたら……』というパラレルな世界、ウルトラゾーンに入ってゆくのです」
という番組ナレーションに誘われ、『ウルトラゾーン』の世界をどっぷりと味わってみてください。
(太田サトル)