先日、書店で約30年前の懐かしい本を見つけ、つい購入してしまった。

分厚いポケットサイズの秋田書店「大全科」シリーズの『悪魔オカルト大全科』と『ショック残酷大全科』(=写真)。


「恐竜大全科」や「なぞなぞ大全科」「マジック大全科」「まちがい探し大全科」などの子ども向けラインナップに、何食わぬ顔でこうしたオカルト・怪奇モノの物凄い内容が紛れ込んでいるのは、当時、子供心にも少し不思議な感じがしていた。

それにしても、こんなにも古い本が古本屋でなく、一般書店で手に入るとは。
奥付にはそれぞれ昭和57年、58年初版発行の重版で、平成3年、5年発行のものとあるけれど、それにしても20年以上前の本が絶版にならずに書店に普通に並んでいるのは驚きだ。

実は昭和40年代生まれには、「オカルト」「怪奇」モノを求める層が一定数いるようで、近年、昔の『コロコロコミック』の「トラウママンガ」特集本が刊行されていたり、最近はムック『円谷怪奇ドラマ大作戦』が刊行され、大ヒットしていたり、ヤフオクなどでも昔の怪奇モノ本には高値がついたりしている。

こうした声を受け、秋田書店でも「怪奇モノ」を復刻しようという動きがあるのだろうか。
秋田書店に聞くと、広報担当者が次のような回答をくれた。

「昭和のオカルトブーム時に発行した本が未だに販売され続けていることは、こちらとしましても驚きであり、嬉しく思っております。一部熱狂的なファンに支えられていることを実感いたします。
ただ、既に最後の重版から10年以上経っていることもあり、内容の見直しなども 多く出てくるであろうことから再重版は考え難いと思われます。絶版本に関しましても今現在では復刻は未定となっております」
ちなみに、「オカルト」ということでは、近いものとして雑誌『ミステリーボニータ』(オカルト・ロマンを描かれる高階良子先生など)はまだその色を引き継いでいるところもあるそうだ。

改めて前述の「大全科」の内容を見直してみたい。
『悪魔オカルト大全科』のほうは、『エクソシスト』『フランケンシュタイン』などの「怪奇映画BEST7」から始まり、「怪人・怪物」として、映画『オーメン』『シャイニング』『ポルターガイスト』『キャリー』『悪魔のいけにえ』『悪魔のはらわた』といった超有名どころから、かなりヒットした『サンゲリア』『スクワーム』、マニアックな『赤はげ人間』『アヒル女』なんてものも紹介されている。

さらに、「日本の妖怪」「幽霊」の数々、16頁ものボリュームを割いた「悪魔の呼び出し方」や、ディープな「オカルト迷信集」「特撮の秘密」、映画のポスターなども豊富に収録されていて、実に充実した内容だ。

一方、『ショック残酷大全科』のほうは、残酷映画の巨匠ヤコペッティの作品を軸に、世界の残酷ドキュメントや残酷な狩り、血の祭り、奇祭、ドレイ商人、奇習の数々などが紹介されているほか、数々の映画から残酷なシーンばかりを抜粋。コンセプトも、残酷写真の数々も、現在では作るのが困難に思える本となっている。

貴重な内容の本でありながら、かろうじて現在もネット書店ほか、一部書店で入手できるようなので(平成25年7月23日現在)、オカルト・怪奇好きの方はぜひ探してみては?
(田幸和歌子)