クールジャパンと騒がれる昨今。近年、海外からクールジャパンとして評価されているものの1つに、「木工家具」が挙げられる。
日本では、いまいちピンとない人も多いかもしれないが、この木工家具、これから先もずっと大切にしていきたい日本の文化「木工加工技術」に由来する。

木工加工技術は、そもそも宮大工の流れからきている。宮大工は、神社仏閣の建築や補修に携わる大工のこと。厳島神社や東大寺の大仏などの木造建築物を想像するとわかりやすい。

この木工加工技術を利用した「木工家具」を生産している企業の中でも特に頑張っているのが広島県の株式会社マルニ木工。マルニ木工では、近年、輸出の取扱国数や輸出額も右肩上がり。広島県発の世界の定番家具を目指している。今回、代表取締役社長の山中武さんにお話を伺った。

■ 日本ならではの“細部への気配り”、繊細さ

日本の“木工加工技術”はなぜ注目を浴びているのか。その答えは、とても日本らしいところにあった。
「例えば、椅子の前足組の部分、強度的に弱い部分は、ヨーロッパでは鉄を打つ。日本では、木で固定します。
100キロで1万回の衝撃を与えても壊れません。細部にこだわるという部分が大きいと思います」
どんなものでも日本の良さを語るときに出てくる「細部へのこだわり」というものが、もちろん、木工家具にも当てはまるのだ。

■ 家具を作る際のこだわり“工芸の工業化” 売上げ規模も右肩上がり

「工業製品であるべきだと思います。創業者がずっと提唱しているのが“工芸の工業化”。工芸的なものづくりを、工業製品として作る。基本的には、機械加工なのですが、最後は職人が仕上げています。“人と機械のバランス”を大事にしていこうと考えています」
日本の木工家具を世界へ発信していくためには、一つ一つ手作りでお金をかけているのではなく、機械化を行い、工業化を整備していくことがポイントになってくるという。

「売上のボリュームでは、まだまだ日本が多いのですが、世界に輸出をできている国、19カ国、年内には22カ国に増えそうです。数字がいいのは、オーストラリア、北米。フランスのディーラーさんにも注目いただいています」
工業化が功を奏して、現在は売上げも好調。世界各国への輸出も増えてきているという。

■数年前に企業再生……どん底から這い上がってきた企業 あるファンドとの出会い

マルニ木工は、実は数年前に企業再生を行っている企業。
現在は好調な業績であるけれども、様々な苦労があったという。その中でも、ミュージックセキュリティーズという会社が運営しているマイクロファンドプラットフォーム「セキュリテ」という取り組みが興味深い。お金とファンを同時に集める仕組み、また、企業とエンドユーザーとのコミュニケーションのハブともなっている、お金以上の価値!? を生み出すファンドなのだ。

「調達コストを考えると、金融機関から調達した方が効率が良い。でも、セキュリテという事業が面白かった。投資家さんとの出会いが嬉しい。西会津にある小さな家具店から、「こんな夢があるならサポートしたい」と言われたり、お世話になっているバイヤーさんに『応援してます』と言われると嬉しいし、先輩方が培ってくれたものに感謝もするし、一方でもの凄いプレッシャーも感じます」

このようなファンドを活用しながら、ファンに愛され続ける製品・企業であることは、今回のインタビューで山中さんの人柄からも感じることができた。深澤直人さんをはじめとする世界的に有名なデザイナーを採用しており、家具は機能面だけでなく、もちろん、見た目も素晴らしい。広島県発の世界のスタンダードの木工家具として、工芸の工業化をすすめるマルニ木工をこれからも応援し続けたい。
(ナナ)
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