新生活を始めるとき、必要なものを買いそろえたり部屋を探したりと、準備のわずらわしさは相当なものだ。日本語に不自由な外国人にとってはなおさらのこと。
彼らはどうやってそれら準備を整えているのだろうか? 色々聞き込んでいくと、どうやらネット上の英語情報サイトが大きなウェイトを占めていることが分かってきた。その一つが「クレイグリスト」と呼ばれるサイト。どのようなものなのか。

クレイグリストとは不動産や求人情報、不要品の売買など様々な情報を載せる掲示板のようなサイトだ。1995年に米サンフランシスコ・ベイエリアのローカルな情報交換サイトとして始まったものが、現在では米国内はもとより世界約50ヵ国で地域別に展開されている。もちろんクレイグリストの東京版もあり、そこでは主に英語でやり取りがおこなわれている。


クレイグリスト内は都市別に分類され、さらに分野別(不動産、求人など)に分かれている。さらにそれら不動産や求人の項目も細かく住居形態や職種別に分けられ、なかには連絡が取れなくなった知人を探しているといった書き込みもあり、生活全般をカバーできる広範囲なものとなっている。

例えば、外国人にとって苦労することの一つとして部屋探しがある。不動産会社を介しておこなう家主との契約や保証人、敷金、礼金などの手続きなど、日本語に不自由する外国人にとって悪戦苦闘する要素がふんだんに詰まっている。また、ワークングホリデーなど一年間限定で日本に滞在する外国人の場合、契約金や礼金などは通常以上に割に合わない出費になる。そういう時に、クレイグリストで一つの物件を数人で共有するシェアハウスを探したり、シェアする人を募集したりするのだ。
シェアハウス自体は欧米でよくおこなわれている居住形態なので、彼らにとって敷居は高いものではない。

クレイグリストに代表されるような、日本で日本語を使わない世界が広がっていることに少々違和感を感じるかもしれないが、異国で暮らす外国人にとってはありふれたものだ。例えば、約1万人の日本人(平成23 年10月1日現在:外務省調べ)が暮らしているパリには、彼らをカバーすべく日本語のクレイグリストのようなものがネットや現地日本語フリーペーパーなどに存在する。そこには個人のほかに正規の業者もいるし、非正規の取引もある。例えば、賃貸料は安いが法的に認められていない形態で部屋を貸すなどだ。母国語なので安心してコミュニケーションを取れる反面、各やり取りのトラブルは個人間で責任を負わねばない。
もちろん誠意ある相手であれば良いが、信頼できる相手ばかりとは限らない。

様々なことを得られる反面、リスクもあるクレイグリスト。それらを踏まえながら上手に活用していけば、同じ日本でもさらに世界は広がる。
(加藤亨延)