だしを取る時間がなくて、味噌汁を作らないという人も少なくないだろう。以前コネタで、実はだしは1分でとれることを紹介したが、だしをとった後に“濾(こ)す”ひと手間すら面倒だという人もいるのでは?

そんな人にオススメしたいのが、沖縄の郷土料理「かちゅー湯」。
“かちゅー”とはかつおの意。つまり、かつお節スープ。実はこれ、作り方が衝撃的なまでに簡単なのだ。

とりあえず、レシピを見てほしい。
(1)お椀にたっぷりのかつお節と味噌を入れる
(2)お湯を注ぐ
たった、これだけ。市販の即席スープを作るのと、手間も時間もそう変わらないだろう。

ちなみに味噌の代わりに、塩やしょうゆで味をつけ、すまし汁感覚で飲む人もいる。具は入れなくてもOKだが、もずくやしょうが、ネギなどを加える人もいるという。
「いわば即席スープ。疲れたときなんかによく飲みますね」
とはある沖縄県民の弁。沖縄では誰もが知っている定番とはいえ、食堂のメニューなどで見ることはほとんどない、いわば家庭の味。前述の沖縄県民も、
「知らないだけかもしれないけど、店では見たことがないですねえ」
と言っていたし、私もネットで調べてみたが、かちゅー湯がメニューにあるらしき店は1軒しか見つけられなかった。


そんなかちゅー湯が、実は今、東京都内でも食べられる。和食居酒屋「稲田屋 秋葉原店」と鰹節屋ヤマキがコラボし、4月10日(水)~6月9日(日)の期間限定でアレンジかちゅー湯を提供しているのだ。

店の人に話を聞いてみると、ポスターや界隈のフリーマガジンなどで告知していることもあり、すでに評判は上々とのこと。
「お酒のシメにオススメしているのですが、先日は全員が頼んでくださった団体もありました」
注文するお客さんのほとんどは、かちゅー湯のことを今まで知らずに頼んでいるという。

稲田屋で提供しているアレンジかちゅー湯は全3種。オーソドックスに梅をトッピングした「梅かちゅー湯」(300円)は飲んだ後のシメにぴったり。野菜たっぷりでヘルシーな「BLTかちゅー湯」(400円)はベーコン、レタス、トマトという組み合わせが意外にも好相性。そして、鳥取の名産である岩もずくを使った「もずくかちゅー湯」(350円)は、鳥取酒蔵の直営店である「稲田屋」らしいひと品。いまのところ、もずくかちゅー湯が一番人気らしい。

今回、同店とコラボしてレシピ提供などをおこなっているヤマキでは、若い人にも鰹節を食べてほしいという思いから「かちゅー湯」を提案。「The かちゅー湯」というサイトでレシピも紹介している。

とりあえず、私も同サイトのレシピを見ながら自宅で「もずく入りかちゅー湯」と「梅干し入りかちゅー湯」を作ってみた。
食べてみると、ダイレクトに伝わってくるかつお節の豊かな香りとうま味にうっとり。もずくの歯ごたえのある食感も楽しく、梅干しを入れたかちゅー湯のほどよいすっぱさもヤミツキになる感じだ。

今回は材料の分量を正確に計ったので、準備に5分ほどかかったが、慣れれば目分量でいけるから1分程度で用意できそう。また、お湯を入れれば、簡単に味が調節できるのも嬉しいところ。稲田屋でもお湯はお客さんが自ら注ぐスタイルで、味の濃さはお客さん自身の好みで調節できるようになっているそうだ。

かつお節の消費量全国ナンバーワン(※総務省統計局 家計調査年報平成21年度より)の沖縄県が育んだ究極のインスタントスープ、かちゅー湯。飲みのシメだけでなく、二日酔いの朝や風邪を引いたときに飲む人も多いそう。もちろん、味噌汁やスープを作るのが面倒なときにも、ぜひ。
(古屋江美子)
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