パリ市内の小売店では、日本と同じくコカ・コーラとペプシ・コーラの2強が幅を利かせているが、そこに最近「パリ・コーラ」「パリゴー・コーラ」というパリのご当地コーラが登場した。
パリ・コーラは「パリジャンのようにちょっとわがままで皮肉屋だけど、おいしさがいっぱいつまったコーラ」がコンセプト。砂糖からすべて地元で念入りに一貫製造されているそうだ。一方、パリゴー・コーラも「たっぷりのユーモアとイタズラ、エネルギー、ずる賢さというパリのエスプリがボトル詰めされたコーラ」とうたう。それぞれ基本的にパリのテロワール(風土から生産物に反映されたその土地特有の性格)と地域密着を掲げ、一部大手小売店の他に市内の個人商店へも卸している。
通常のコーラとどう違うのか。両商品とコカ・コーラを飲み比べてみた。両者ともコカ・コーラよりは甘く、パリ・コーラとパリゴー・コーラでは、パリ・コーラの方が少し甘かった。どちらともコカ・コーラよりは炭酸が弱いが、両者間で炭酸の強さはほぼ同じ(気持ちパリゴー・コーラが弱いかも)だった。
じつはフランスのご当地コーラブームは今夏のパリで限ったことではない。北西部ブルターニュで生まれたブレイス・コーラを皮切りに、南部コルシカ島のコルシカ・コーラ、東部アルザスのエルサス・コーラなど、この10年間で30以上のご当地コーラが誕生している。加えて同じ地域に複数のご当地コーラも生まれるなど、フランスはコーラ戦国時代の様相を帯びている。
例えば、中部オーベルニュ地方のブーニャ・コーラはオーベルニャン・コーラと争った結果、ブーニャ・コーラがオーベルニャン・コーラを買収する顛末となった。ブルターニュでもブレイス・コーラに対抗すべくブリット・コーラが発売された。パリも5月に、パリゴー・コーラがパリ・コーラに対し商標の無効と不正競争の理由で損害賠償請求を起こした。
なぜこれほど「ご当地もの」が好まれるのだろうか。米ウォール・ストリート・ジャーナルが伝えた仏地域コーラ組合の話によれば、フランスはテロワールという考え方が強く、その誇りはフランス人の心に定着しているからだという。
パリのコーラ戦争は今年始まったばかりだ。どこが売り上げを伸ばし、同地域のライバル、そしてコカ・コーラなどの大手とどう対抗していくのか。今後の展開に注目だ。
(加藤亨延)