「パン、パン、サラダ、パン」というわけで、パンが食べたくなってきた。そして、そんなテンションに相応しい情報を入手!
9月15日、「東京カルチャーカルチャー」(お台場)にて開催されたのは、その名も「お台場・秋の利きバゲット祭り!~あなた好みのバゲットを見つけよう」なるイベント。


ここでバケットについて、老婆心ながら解説させてください。フランスパンには、大まかに6つの種類があるそうです。例えば“ひも”のような形(およそ120g:35cm)をしたものは「フィセル」という名が付いているらしく、“フルート”の形状(およそ200g:65cm)のパンは「フルート」と呼ぶとのこと。
そして“杖・棒”状(およそ260g:68cm)のものが、まさに愛しの「バケット」に当てはまるわけです!

そんなバケットを都内有名パン店5軒から取り寄せ、一度に味わい語りあい食べ比べる宴が行われたこの日。
早速、バケットに一家言持つ識者が続々と入場してきました。「硬いパンを食べる会」を主催する“バゲット評論家”の平岩高弘氏。
各種メディアへの出演でパンの美味しさを普及し続ける“パンライター”の池田浩明氏。食品会社に勤めつつ、プライベートでは自ら焼いたパンを振る舞いパンパーティーを主催する製菓衛生士の石井久子氏。2007年、武蔵小山にて「nemo Bakery&cafe」をオープンさせたオーナーシェフの根本孝幸氏。

オープニングから、このカリスマたちによる熱き解説が止まらない。
「バケットは“パン中のパン”。バケットのことを理解すれば、他のパンのことは全てわかりますから! 一番、基本中の基本なんで」(池田氏)
「バケットには“美味しい”だけでなく“楽しい”もある。
それを今日は体験してもらいたいと思います」(平岩氏)

では、今日のルールについて。お店の名前を伏せたまま、5種のバケットが一つのお皿に乗ってやって来ます。それを、美味しくいただいちゃいましょう。
一方、こっちも食べてるだけじゃいけない。我々の座る席は事前にグループ分けされており、「美味しい!」と思ったお気に入りのバケットTOP3を各グループが選出します。そのランキングも、何も付けないまま食べる“素バケ”TOP3と、バターを付けた状態の“バターバケ”TOP3と、二種類の判定が義務付けられている。
この過程と結果を楽しみつつバケットへの造詣を深めるのが、今日の趣旨です。
「1/6くらいにカットしたバケットが5つですので、今日は“ご飯2杯分”くらいの分量だとお考えください」(平岩氏)
無論、わざとお腹を空かせた状態で我々もやって来ているわけで。

しかし、ジラさせる。食べる前に、カリスマたちからいくつかのアドバイスがある模様。それらは、以下にまとめた通りです。
食べる前に香りを楽しんでほしい。
一本一本香りも全然違うので、自分の好みのものを探してもらいたい
手に取った時に、重さや皮の感触が、それぞれ全く違う。潰してみると、跳ねっ返りも異なる。触感を確認してもらいたい
二口目で、鼻から呼吸をしてほしい。唾液によって口内全体に色んな味が回るので、最も敏感なのは二口目

もう、いいですか? さぁ、ようやっとバケット達が我々のテーブルに運ばれてきます。あらぁ、やっぱりどれも全然違う! 食べてみると、見た目以上に差異が激しい。スタンダードなものもあれば、皮が硬いものもあるし、一際酸味が効いたものも美味。

あと、食べ方によって印象がガラッと変わってくるのも新発見。皮は皮、中身は中身で分けて食べると新境地なので、オススメの食べ方だ。

そんなこんなで、今度はバターを付けていただいてもいいッスか? 実は主催者側の意図により、前半15分は「バター禁止」令が出されていたのです。しかし、ようやくそれも解禁になったなので……。
おっ、これもまた趣が全く異なる。“素バケ”は“素バケ”で良かったが、バターを付けるとバケットのまた新たなる一面が。
これ、素バケTOP3とは全く順位が変わってくるぞ……。

そんなこんなで各グループによるTOP3の提出も済ませ、いよいよ気になる結果発表の時間です。それにしても興奮させるのは、我々が食べたバケットの中には、「nemo Bakery&cafe」製も含まれているという事実。根本さん、なんちゅうリスクを背負って会場に来てくれたんですか……。
では、まず“素バケ”ランキングから。結果、第1位は広尾に居を構える「SWAMURA」に輝きました! 一方の“バターバケ”ランキングは、「デュヌ・ラルテ」のバケットが1位を獲得!
「このランキングを見ると、“素バケ”の時は味が濃いバケットに票が集中することがわかります。『毎日食べたいのは何だろう?』と考えると、また評価は変わってくるんでしょうね」(平岩氏)

ちなみに「nemo Bakery&cafe」のバケットは、“素バケ”ランキングで4位、“バターバケ”ランキングで2位でありました。
「気を使ってわざと言ってないだけで、実はこれらのバケット、根本さんは全部作れるんです。例えばSAWAMURAは広尾にありますけど、多くの人にとっては“たまに行く場所”ですよね。一方、根本さんのお店は住宅地で“日常のパン”を出していますから、味は濃くない方が良いわけです」(池田氏)
あぁ~、なるほど。という事は、こういう事だ。バケットとの付き合い方やシチュエーションによって、我々も多くの選択肢の中から打ってつけのパンを選べば良い。味が濃くてわかりやすいと「美味しい!」と感じがちだけども、バケットの魅力はそれだけではないようだ。「バケットには“美味しい”だけでなく“楽しい”もある」というオープニングでの台詞、蘇ってきましたよ!

台風の影響で集客も危ぶまれたこの日でしたが、終わってみれば文字通りの超満員。6:4~7:3で女性が多い来場者でしたが、静かなブームが起こり始めている印象です。
(寺西ジャジューカ)