11月1日フランスでは「万聖節(Toussaint)」だった。万聖節とは聖人たちを祝う日であり、故人を思い墓参りをする日だ。
パリでも市内にある各墓地には多くの人が訪れ花を飾る。この前後、フランスの学校は休みにもなる。そこで日仏のお墓事情を比べてみた。

亡くなった場合、フランスでは多くがカトリック式の葬儀を行う。仏外務省によれば、フランスにおける各宗教の割合はカトリックが全人口(約6570万人)の65%、イスラム教は6%、プロテスタントは2%になるそうだ。そして東方正教会、アルメニア使徒教会や様々な東方キリスト教諸派が75万人、ユダヤ教60万人、仏教40万人、新興宗教14万人と続く。


フランスでは1963年にバチカンが認めるまで、カトリックでは火葬は禁じられていたため、土葬が主だった。しかしその傾向も近年大きく変わりつつある。仏世論調査研究所(IFOP)によれば、1979年の時点では1%だった割合が、今では32%になった。仏国内の火葬は年間約17万件行われ、160ヵ所に火葬場がある。パリにおいては火葬の割合は45%まで上昇した。

ただし隣国都市と比べるとこの数字は大きなものでもない。
ロンドンでは90%、コペンハーゲンでは95%が火葬される。一方でイタリアは13%(しかし北部イタリアに限れば35%)とフランスより低い。

日本では公営の他に寺などもそれぞれ墓地の管理をしているが、フランスはすべて自治体が管理する。パリの場合、広さは通常2m×1mだ(幼い子供の場合は1m×1mの場合もあり)。仏葬儀情報協会によれば2平方メートル10年契約が755ユーロ(約10万円)、30年が2560ユーロ(約34万円)、50年が4004ユーロ(約53万円)、永代が13430ユーロ(約179万円)になる(2012年の価格:1平方メートルの価格はその半額)。

フランスのカトリックの場合、葬儀の雰囲気も日本とはずいぶん異なる。
親族以外の参列者できっちり喪服を着る人は多くない。香典の習慣もなく、故人に献花し哀悼する。そして埋葬されると、冒頭に述べた11月1日などに墓参りを行い、墓の掃除をして鉢植えの菊などをお供えとして飾る。そのためパリ市内各所にある墓地では、この日は多くの花々で彩られ、より華やかな雰囲気に包まれる。
(加藤亨延)