和食が世界遺産に認定されたことは、まだ記憶に新しい。そこで注目されているのは、乾物を使った伝統の日本食。


しかし、乾物というとなんとなく手間がかかりそうなイメージがある。
特にこうや豆腐は水を換えながら戻して絞って煮込んで……と、面倒くさいと思う人も多いはず。しかし、最近のこうや豆腐は戻す一手間を省いてもいいそうなのである。

美味しいこうや豆腐の煮付け方を、旭松食品さんに伺ってみた。

旭松さんによると、最近は温めた煮汁の中に、乾燥状態のこうや豆腐をいれるだけ。あとは煮るだけで調理完了。
昔よりずっと簡単に調理できるようになったそうだ。
家庭でこうや豆腐を作った時、妙に固かったことはないだろうか。これは戻しが甘かったわけではなく、味付けのせいなのだそう。こうや豆腐を作るのに厳守したいのは、薄目味付け。
こうや豆腐には仕上がりをふっくらさせるため、重曹が使われている。薄味なら問題ないが、酸性の醤油をたっぷり使うと固くなってしまう。
甘めの薄味で煮込むと、ふんわり柔らかく仕上がるそう。

そして、こうや豆腐といえばただ四角いばかりと思っていないだろうか。
いまではさいころサイズ、薄切りタイプなど種類豊富。こうや豆腐の消費量が格段に多い信州では、粉豆腐という細かい粒状こうや豆腐まであるそうだ。
どんな風に使うかといえば、肉に混ぜたり小麦粉代わりにお菓子作りに利用したり、と粉だからこそ幅広い。
こうや豆腐の原材料は、いうまでもなく100%大豆。
低カロリー、高たんぱくというダイエットにもうれしい食材。
そんな無限の可能性を秘めたこうや豆腐をもっと楽しんで貰いたい、と旭松さんでは“だから、こうや豆腐を食卓に。”という本も出されている。そちらでは、こうや豆腐を使ったステーキやデザート、揚げ物など変わり種のメニューも紹介されている。

こうや豆腐の歴史は、その名野通り鎌倉時代に高野山の僧が作ったという説。また、長野の冬の保存食、凍み豆腐がルーツという説もある。

どちらにしても古い歴史を持つわけだが、基本は各家庭で手作りされる食材だった。そんなこうや豆腐が日本中で食べられるようになったのは、明治時代。この時はじめて人工冷凍豆腐が生まれ、工場生産に成功。全国にこうや豆腐が広がった。
しかしのちの戦争で原材料である大豆や物資の不足に悩まされ、こうや豆腐は再び手作り品に頼ることとなる。
しかし戦後、業界が一致団結。
こうや豆腐の復活と周知を目指した。その頑張りもあり、再び日の目をみることとなったのだ。

現代になっても、簡単、時短で調理できるように改良されるなど、こうや豆腐の進化はまだまだ終わりそうもない。なんといっても、新年会などで暴飲暴食になりがちなこの時期には、薄味でふんわり柔らかく調理された高たんぱく質な高野豆腐がぴったり。疲れた体を食を、リセットしてみてはどうだろうか。
(のなかなおみ)