8月30日から10月18日まで、パリの老舗百貨店ル・ボン・マルシェ・リヴ・ゴーシュで「ル・ジャポン・リヴ・ゴーシュ」と題した企画展が行われている。伝統工芸の老舗店やBEAMS、東急ハンズなどの他に、カルチャー部門のメーンゲストとして、アートの島として有名なベネッセアートサイト直島と建築家・安藤忠雄が招かれた。


直島は瀬戸内に浮かぶ島の1つだ。隣接する豊島、犬島と共に、ベネッセホールディングスと福武財団によって、「ベネッセアートサイト直島」としてアート活動が行われている。数多くの作品が屋外、美術館、 古民家などに置かれ、直島は安藤忠雄の建築や李禹煥、ジェームズ・タレル、草間彌生、クロード・モネなどの作品が、豊島ではクリスチャン・ボルタンスキーのインスタレーションや、内藤礼と西沢立衛による豊島美術館、横尾忠則と永山裕子による豊島横尾館などが、犬島では長谷川祐子と妹島和世による犬島「家プロジェクト」などが鑑賞できる。地方の一地域で、これほどの名前が並ぶことはまずない。

パリのイベントでは、ル・ボン・マルシェ・リヴ・ゴーシュの3階部分に安藤忠雄が設計を手掛けた直島の建築を再現して、直島を体感できる空間を作り上げた。そこにエコールブール国立工芸学校の学生によって再現された模型に、映像・ライト・音を駆使したプレゼンテーションが加えられた。
同館1 階の展示「スマイル」では、仏フォトグラファー・ガブリエル・ド・ラ・シャペルとカンタン・ラベイが、3島をまわって収めたフォトビデオを飾り、アートによって島が活性化し島民に戻ってきた笑顔(=スマイル)を表現した。

このスマイルプロジェクトが示すように、直島においてアートと地域振興は不可分なキーワードだ。昔ながらの島の風景に現代アートを溶け込ませる「島おこし」は1つの成功例となり、過疎化に悩む全国各地の手本になった。アートは国内の若い世代の興味を集めただけでなく、今や海外からも高い関心を呼んでいる。直島本村地区にある飲食店カフェサロン中奥の話では、島内にある飲食店の多くは、時期により店内がほぼ外国人だけで埋まる時もあるそうだ。

来島する外国人の中でも、特に多いのがフランス人である。
ベネッセアートサイト直島によれば、フランスは米国、韓国とともに上位3カ国に入るという。なぜフランス人は同島に惹かれるのだろうか。

現代アートに対する興味、日本の伝統文化を感じつつ世界的芸術にも触れられる環境、自然との付き合い方など、フランス人が休暇に求めるものとベネッセアートサイト直島の提案が近いことが、彼らを直島に惹きつけるポイントだ。スポットをまわることに重点を置くのではなく、気に入った作品を前にいろいろと思いを巡らせながら、ゆっくりと過ごすということ。上質な芸術と歴史、自然が上手く溶け込んだ環境があるということ。これこそ直島が、国内だけでなく海外からも多くの人々を呼び込む魅力なのだ。

(加藤亨延)