海外で有名な日本人といえば、イチロー、坂本九、オノ・ヨーコ、そして安倍晋三といった、時の首相などが挙げられる。しかし、2015年にベトナムで実施された調査では、二位に意外な人物が食い込んだ。
その名前は「小澤マリア」。もし今反応したのであれば、あなたは男性ではないだろうか? なぜなら彼女は…元・AV女優、だからだ。

二人の女神、「中国の蒼井そら」と「東南アジアの小澤マリア」


1986年生まれ、カナダ人の父と日本人の母を両親に持ち、顔立ちは南欧風で「可愛い」か「美しい」で言えば圧倒的後者。2005年にAV女優としてデビューし、2010年にAV女優業を引退。小澤マリアについて簡単に説明するとこの通り、仕事ぶりについてはご自身で作品をご購入いただきたい。
元AV女優・小澤マリアはなぜ社会主義国家ベトナムで「女神」になったのか
肖像権をクリアしていないためご自身で検索を。

海外で有名なAV女優といえば、中国での蒼井そらが思い浮かぶ人も多いだろう。中国版Twitterとも言える「微博」での彼女のフォロワーは1600万人を超え、「女神」と讃えられるほどの大人気ぶり。
一方、後輩にあたる小澤マリアも微博に登録しているが、こちらは210万フォロワー弱。これはこれでものすごい数字だが、彼女の本領は中国ではなくベトナムはじめ東南アジアで発揮される。ベトナムでは「女神」といえば蒼井そらではなく小澤マリアであり、タイでは有名歌手のミュージックビデオに出演し、インドネシアやフィリピンでは複数本の主演映画が撮られるほど大人気。

が、なぜ小澤マリアは東南アジアで人気に、ベトナムで「女神」と呼ばれるまでになったのか?

そもそも、アジアで日本はぶっちぎりのAV先進国


某海外アダルトサイトにアクセスしてみると、欧米系の女優の作品に負けないほどの割合を占める日本のAV作品たち。「HENTAI」が国際語化している点を挙げても、日本のイメージのひとつに「AV」が組み込まれていることは世界では周知の事実だ。もはや、スシ、フジヤマ、アダルトビデオ…とは言い過ぎではあるが、海外の男性ネットユーザーに絞ればかなりいいところまでいくだろう。

日本とアジア他国のAV作品の差は圧倒的だ。
厳密に言えば、女優や男優、それに監督や助監督まで、スタッフを揃え、脚本まである「作品」として取り組んでいる国は、アジアにおいてほぼ日本だけかもしれない。それに、一般的にはエロければ万事よく、外国語の字幕や吹き替えを求められるような(その国に合わせた)ローカライズは必ずしも要らないコンテンツとも言える。今後もよほどのきっかけが無い限り、アジアにおけるこの産業は、日本の独壇場ではないだろうか。

しかし、今でこそこうしてインターネットを通して簡単にアクセスできるが、そうなる前はどうだったのか。ベトナムはじめ東南アジアの男性諸君はいかにして、小澤マリアの前に、日本のAVを知り得ていたのか。その実態は、かつての日本における「裏ビデオ」の扱いを思わせるものだった。


検閲社会に射し込む光明、小澤マリアは阿弥陀如来だった?


社会主義国家であるベトナムは、国内へ持ち込まれる「わいせつ物」の検閲が厳しい。現代ですら、スポーツ新聞に載る程度のヌード写真でも持ち込むと最大2000ドル(20万円強)ほどの罰金が課せられることもある。しかし、日本人が持ち込んだのか、ベトナム人の誰かが持ち帰ったのか、第三国を経由したのか、流れ込んできた経緯は分からないが、日本のAV作品は確かに存在していた。
元AV女優・小澤マリアはなぜ社会主義国家ベトナムで「女神」になったのか
ギッシリと詰められたCDを売る行商、その奥底には何が…。

現地の友人から聞いた当時の入手経路はこうだ。屋台でビールを飲んでいると、歌謡曲を大音量で流しながら自転車に乗ったおじさんが乗り付ける。荷台には大量のCDやタバコが積まれてあり、表向きはそれらを売っているのだが、実はその底に海賊版のAVが敷き詰められている。法的に存在してはならないもの、取り扱いは日本における裏ビデオが近いかもしれない。
エロが制限されたベトナムの血気盛んな若者たちにとっては、暗雲を切り裂き地上を照らす、一筋の光明だっただろう。
元AV女優・小澤マリアはなぜ社会主義国家ベトナムで「女神」になったのか
こちらは映画DVDショップだが、ほぼすべてが海賊版だと言ってもいい。

元AV女優・小澤マリアはなぜ社会主義国家ベトナムで「女神」になったのか
スタジオジブリの作品が20本も!だいたい中国からの流れ物。

しかし、その状況もつい数年前の2010年頃に大きく変わった。この年にADSLの普及がはじまり、低速ながらもYouTubeなどの動画コンテンツを楽しめるようになったのだ。お気づきだろうか、2010年という数字は冒頭で述べた小澤マリアの引退年である。彼女は、もともと東南アジアで好まれやすい容姿に加えて、ベトナムの海賊版AVの終末期であり最盛期という、認知されるという点では最高のタイミングで活動。現地の若者たちにとって、光明の先で自分たちのリビドーを救う阿弥陀如来、まさに「女神」だった。
そしてその知名度はいよいよ、時の首相に次ぐレベルまで到達した。
元AV女優・小澤マリアはなぜ社会主義国家ベトナムで「女神」になったのか
これはホントの阿弥陀如来(阿弥陀二十五菩薩来迎図より)。

今、小澤マリアはどこで何をしているのか


そんな小澤マリアの現在はというと、つい先月(5月末)にフィリピンの首都・マニラで高級ラウンジをオープンさせたという。昨年は同国の映画にも出演し、地元のテレビやラジオから彼女への出演オファーが殺到したとのこと。東南アジア全体の人口が6億を超えることを考えれば、彼女に「お世話になった」男性が一億人を超えていても何ら不思議ではない。

その唯一無二の知名度を持って今後は何をするのか、小澤マリアの一挙手一投足に注目だ。
(ネルソン水嶋)