クレジットカード決済をするとき、サインを必要とされるところと、暗証番号入力で良いところがある。

さらに、サインも暗証番号も不要で、「金額だけご確認ください」と言われるところもある。

これって、どういう違いなのだろうか。

「いずれも不要」というパターンがいちばんラクだけど、デメリットはないのだろうか。
一般社団法人日本クレジット協会に聞いた。


クレジットカードのICチップに注目


「サインと暗証番号の違いですが、まずポイントとなるのは、ICチップの有無です」(広報担当者)

クレジットカードの券面に書かれたカード番号の上に、真四角で金色のモノがむき出しでついている。それがICチップだ。
「ICチップがついているカードで、なおかつお店のほうも暗証番号入力ができるパッドがついていたり、ICチップを読み取れる端末があったりする場合には、暗証番号での決済となります」
つまり、サイン決済となるのは、クレジットカード自体にICチップがついていないか、あるいは、お店のほうがICチップの読み込みをできる環境にないということ。

では、サインと暗証番号とでは、どちらが安全なのだろうか。

「安全なのは、サインよりも、暗証番号決済のほうです。なぜなら、暗証番号は本人しか知らない番号であるのに対し、サインは巧妙にマネすれば誰でもできてしまうからです」
暗証番号も簡単に読み取られそうなイメージがあるけれど……。
「ICチップには、カードの番号などの情報が入っています。その情報は暗号化されてはいっている状態ですので、他人には盗み取れない、盗み取れたところで、わからないのです」
そのため、安全性の点から、日本クレジットカード協会では、ICチップのついたカードを推奨しているそう。
「新しいカードにはICチップがついているものが多いですし、カードの更新時にICチップつきに変わることも多いです。ICチップのついたものは今後もどんどん増えてくるはず。
日本クレジット協会では2020年までに100%にしようと呼びかけているんですよ」


サイン・電話番号どちらも不要なケースは?


ところで、最近、ときどきある「サインも暗証番号も不要」というのは、どんなケースなのか。
「サインも暗証番号もどちらも不要というのは、例えば、スーパーの食品エリアやアミューズメントなど限定的にありますね。しかも、1万円以下など、少額の取引であることが多いと思います。これはあくまで例外的な措置であり、基本的にはサインか暗証番号のどちらかとなっています」
とはいえ、ファッションビルなどの商業施設「マルイ」の「エポスカード」では、かつてはサインで、後に暗証番号を経て、現在では「金額確認」だけになっている。もちろん食品ではないし、1万円以上でもサイン・暗証番号不要だけど……。
「マルイさんのエポスカードの場合、自社のカードですから、サインや暗証番号なしでも問題が起こりにくく、もし問題が起こったとしても、負担は自社の範囲でとどまるので、お客さんの利便性のために『サイン・暗証番号不要』としているだけだと思います」

そこで、エポスカードに理由を聞いてみた。

「エポスカードは2年ほど前から、マルイでの買い物に関して、3万円以上のお買い物の場合には暗証番号かサインが必要ですが、3万円未満であればどちらも不要になっております。これは、レジの端末の切り替えにより、運用の方法が変わったためです」(広報担当者)

3万円までの買い物でサインも暗証番号も不要というのは、ちょっと珍しい。何故なのか。
「一つはお客様の利便性のため。また、もう一つは運用面のリスク回避のためです」
リスク回避というと?
「サインが必要となると、たとえばお客様のご利用の書類が1枚なくなるだけで大変な事件になってしまいます。しかし、マルイグループ内ではデータも会社で持っており、万一トラブルが起きても自社内の処理ができますので、簡略化できるところは簡略化しようということです」
やはりグループ内で処理できるから、ということが大きいようだ。


サインも暗証番号も不要なのは、ラクではあるけれど、あくまで例外的な措置であり、安全性の面から「金額だけ確認」のケースが今後増えていく可能性は、まずなさそうだ。
(田幸和歌子)