甲子園の入場行進、なぜ拳を握り手の甲を正面に向ける学校が多いのか?
次回大会では、入場行進にも注目してみては(画像はイメージ)。

8月8日に行われた第99回全国高校野球選手権大会(以下、夏の甲子園)の開会式での入場行進を見ていて、不思議に思ったことがある。それは、行進のときの手の振り方だ。


拳を握り、手の甲を正面側(進行方向)に向けて行進する学校が、非常に多いのだ。

運動会などで行進するとき、拳は握らず、手の甲は外側を向くのが普通だろう。
手を前後に振りながら拳を前に突き出す振り方は、ともすればロケットパンチのようでもあり、自然な動きではない。しかし、なかには、振った拳が肩の位置より高く上がっている学校もあった。

なぜこのスタイルが主流になっているの? 何か規定があるのだろうか。


高野連と大会本部に聞いてみた


気になって調べてみると、ネット上にも同様の疑問がチラホラ見られた。「軍隊式」とか「昔はもっと多かった」などという声もあった。


その理由について、公益財団法人日本高等学校野球連盟に聞いてみると……。
「行進について、ちゃんとしろとか、ハキハキしろとかいった指導はあるかと思いますが、手の向きや拳かどうかといった規定は特にないと思います。大会本部に確認していただいた方が良いかもしれません」

そこで、大会本部に問い合わせると、こんな回答があった。
「行進についての規定は特になく、例年、各校にお任せしています」
これは昔から変わらないことだそう。拳を握りしめて正面方向に向けて振り上げるという現在主流のスタイルも、基本的に自然にそうした学校が増えたということらしい。


甲子園出場校の野球部員にも聞いてみた


では、なぜ自然に変わっていったのか。各校では行進練習などしているのだろうか。

2017年、夏の甲子園に出場している学校の野球部員に聞くと……。
「僕たちの学校では、行進の指導は特にされていないです。でも中学のときは指導されました。地区予選とかならダラダラしているチームも多いと思うけど、全国とかレベルが高くなってくるとダラダラしたチームはないし、強いところは自分たちで行進の指導・練習もやっていると思います」
そう教えてくれた彼が所属する野球部は、見事に「拳を握りしめて、手の甲を正面に向け、肩の高さまで手を振り上げる」歩き方だった。


手の甲を上げる行進は強豪校の影響?


ちなみに、甲子園大会の取材を長年行ってきた記者は、「言われてみると、手の甲が上の学校が多いですね」と言い、周囲の記者などに調査した上で、こんな回答をくれた。
「理由については誰も知りませんでしたが、あまりの多さに違和感を覚えた人はいました。
YouTubeで69回大会を見ると、あくまで主観ですが、八戸工大一がかろうじて『手の甲上げ』をやっているくらい。さらに、88回大会を見ると、横浜、帝京、常総学院、清峰といった強豪がやっている感じです。強い学校がやっていると、強そうに見え、真似する学校が増え、今年のようになったのではないでしょうか?」

普通に行進する場合、上記のような「拳を握りしめる+甲を正面に向ける」歩き方にはならないが、確かにこの歩き方は元気よく、堂々とした様子に見える。それに対して、普通に行進している学校は、本来は自然なはずなのに、比較してしまうと、どこか元気がないように見えてしまうということはある。

写真などでは、普通の顔だと怒った顔や不機嫌な顔に見えるため、大げさなくらい口角を上げないと笑顔に見えないとはよく言われるが、行進も同じようなことなのかもしれない。
(田幸和歌子)