いずれにせよ、日中両国は互いに大きな影響を及ぼしあう隣国だ。中国の急成長で、両国の経済が密接化するのは自然の流れ。
日本側も、利益を得ることが可能だ。ただし、儲けることだけを目指すのではよくないと、海部元首相は主張する。大切なのは、互いに素直、正直になることだという。海部元首相は、中国の王毅元大使が離任の際にみせた、義理堅さにも触れた。


――日本企業の中国進出で、なにかエピソードはありますか。

海部:地元だった中京工業地帯はせんい産業が盛んな土地です。ご存知のように、産業として決して楽な状態ではない。かつての繁栄を取り戻そうと、中国への進出を希望する企業も、かなり出ました。上海市長だった黄菊さんにお願いして、世話してもらったこともあります。もちろん、成功例も、失敗例もあります。いずれにせよ、各界が力を合わせて積み重ねることが大切ですね。

 経済面での中国の発展はすざましい。
日本にとっては、ちょっと悔しいぐらいと言ってもよいほどです。必然的に、日中の経済関係も密接になる。ただ、日中だけで利益をクローズするのはよくない。南西アジアなど、これから発展してくる国にも、利益をまわすことを考えなければならない。自分の金儲けだけを考えているようでは、よくないと思うのですよ。

――日本と中国で、今後はどのような結びつきが出てくるでしょう

海部:日本にとって、福祉や健康は大きな問題。中国にとっても大きな課題だから、あるいは、中国でうまくいったやり方を、日本が参考にすることがあるかもしれない。

 ただ、中国は広い。地方によって、状況が違う。文部大臣が終わってからだったから、1980年代後半かな。新疆ウイグル自治区を旅行したことがある。日中友好協会のお世話になり、ウルムチやトルファンを訪れました。
個人旅行のつもりで行ったんですが、土地土地の共産党書記に歓迎していただきました。その時の思い出ですが、汽車に乗っての旅でした。窓から見えるのは、一面の砂漠です。寝台車を利用しての、車内泊でした。目を覚ましても、相変わらず砂漠を走っている。「広いなあ」と実感しましたね。

 日中では、若い世代の交流も大切な取り組みです。私は日本の青年海外協力隊を作ったメンバーのひとりでもあります。

 青年海外協力隊は、途上国に対してのお手伝いを念頭にある団体です。ところが、中国側が、「ぜひ、わが国にも来ていただきたい」と言う。

 それで、中国側に言ったのです。日本は歴史的に、中国は学問でも文化でも兄貴分と思っていた。
そんな国に、いまさら海外協力隊が出て行くのは、おかしいのではないかと。しかし、中国側は派遣を望み、正式要請をしてきた。今から20年ほど前の話です。そこで、北京にある中日友好病院や、農業関係で、協力隊メンバーを派遣することにしました。

 そうしたら王毅大使が2007年に離任する際、中国から帰ってきた協力隊メンバーを招待して、個人的にパーティーを開催された。王大使の自費だったそうです。感謝の心をきちんと形にする義理堅い人だなあと、あらためて感じ入った次第です。

 王毅大使には、この事務所にも、よくおいでいただいきました。そんな折には、互いに、不必要に刺激する話はしないようにしました。双方にとってのいい話もするようにしました。互いに素直、正直になることが、友好と親善を促進するうえでの第一の関門だと思います。

――5月1日に、上海万博が始まりました。


海部:成功させてほしいですね。開催前に、担当者に会って話を聞きました。7000万人を動員する過去最大規模の大会になるとのことです。私も招待されました。実際に行けるかどうかは、まだ分かりませんが。

 中国の実情を世界に知らせる発信、アジア近隣国への刺激にもなる。成功させて欲しいですね。(編集担当:如月隼人 聞き手:有田直矢 サーチナ常務取締役 共同制作:人民網日本株式会社)

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