今、若者たちの間で、知らず知らずのうちに自分の髪の毛や体毛を抜いてしまう「抜毛症(ばつもうしょう)」という病気が流行っている。九州保健福祉大学の元教授である心理学者の園田順一先生が、こう説明する。


「抜毛症は中学生や高校生、特に女子に見られる症状です。原因は家族関係といわれてます。親の離婚や虐待を経験していたりする場合が多い」

しかし、成人男子にも発症する人が増えているのはなぜなのだろうか。

「ストレスを感じていると、自分に痛みを与えて発散するようになることがある。毛を抜くというのは体を痛めることでホッとして、快感になるんです。それで、いつの間にか習慣になって無意識のうちにやってしまうようになる。
成人男性が抜毛症になっているとしたら、毛を抜くことでしか解消できないストレスがあるということです。最近はストレスのかかりやすい社会構造のせいか、若い男性にも『抜毛症』患者が多くなってるんですよ」(園田先生)

園田先生はこの病の治療として、「行動療法」という方法を行なっているという。その内容とは、

1.本人にクセを意識させる

2.抜きたくなったら、ほかの行動(ひざを叩いたり)に変換できるようにクセづける

3.なんでもいいから実現が困難で、お金の必要な目標を見つける

4.その目標まで毛を抜かないかチェックしてくれる、できるだけ身近な管理者を探す

5.抜かずにいられた日には管理者から目標のための報酬をもらう。もちろん抜いてしまったら、もらえない

6.目標のためにひたすら頑張る

「ポイントは、もし抜いてしまった日があっても自分を責めないこと。管理者も叱らないこと。そして、抜かなかった日は管理者に大いにほめてもらうのです」(園田先生)

なお、抜毛症の人のなかには、髪の毛ではなく、眉毛を抜いてしまう人もいるという。
人によって抜く毛の場所に違いがあるのだ。

「まだわかっていない部分も多いのですが、この病気は自傷行為のひとつとして考えることができます。見た目にも痛々しい眉毛を抜く人は特に、リストカット患者によくある『周りの目を引きたい』『私を見てほしい』という承認願望があるのではないでしょうか」(園田先生)

ストレスの強い仕事をしていて、しかも気がつけば抜け毛が多い。そんな人は、一度自分の日々の行動をチェックしてみたほうがいいだろう。

(撮影/下城英悟)

■週刊プレイボーイ48号「気になる“抜き毛”事情最前線!!」より

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