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こっちはただのダジャレだもん『電気グルーヴ、石野卓球とその周辺。』

2013年4月8日 11時00分

ライター情報:近藤正高

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アイデア特別編集『電気グルーヴ、石野卓球とその周辺。』
その前身である「人生」時代も含む、電気グルーヴの全仕事を収録し、ファン垂涎の内容の本書。彼らの最新作『人間と動物』のリリースとあわせて2013年3月、デザイン雑誌「アイデア」の版元である誠文堂新光社の創立100年を記念して刊行された。誠文堂新光社といえば、「子供の科学」や「MJ 無線と実験」などといった科学雑誌でも知られるが、そう考えると同社の100周年で電気グルーヴというのはグッとくるものがある。
メンバーの石野卓球とピエール瀧が各作品を解説したインタビューのほか、元メンバーの砂原良徳、デザイナーの和田一基、ヤマシタヤスノブ、田中秀幸、マネージャーの道下善之、マンガ家の天久聖一、そして電気グルーヴのロゴの生みの親であるイラストレーターでデザイナーのスージー甘金らの証言も収録されている。

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先月、Zepp DiverCity TOKYOで開催された、電気グルーヴの「ツアーパンダ2013」東京公演の客がたった3人だった! という話がツイッターで流れてきた。さっそくトゥギャッターにもまとめられ、ライブを観に行った人が口々に「客が3人しかいなかった」「しかも1人は(ピエール)瀧さんの奥さん」とつぶやいているのだが……それがあきらかに3人以上いる(笑)。どういうことだと最後まで見ていくと、ちゃんとオチがついていた。それにしても、こういうバカバカしいこと(ほめてます)をやるときの、電気グルーヴとファンの結束の固さに感心するとともに、あいかわらずだなーとうれしくなる。

そう、電気グルーヴの2人、石野卓球とピエール瀧は昔からこんな感じだった。1990年代のラジオ番組「電気グルーヴのオールナイトニッポン」の頃から(いや、おそらくは2人の原点である1980年代のインディーズバンド「人生」の頃から)、その姿勢には一切ブレがない。ぼくも含め、いま30代から40代初めぐらいの世代には、そんな電気グルーヴから意識するしないにかかわらず影響を受けた人を受けた人も少なくないはずだ。では一体彼らの何に影響を受けたのか、具体的に説明するとなると難しいが、しいていえば「意味のずらし方」とでもなるだろうか。

先だってニューアルバム『人間と動物』がリリースされた際、「テレビブロス」3月2日号に載ったインタビューも終始こんな按配だった(「取材・文」は、電気グルーヴとかかわりの深いマンガ家の天久聖一)。このアルバムを通して動物の人権と地位向上を訴えたいという卓球と瀧に対し、インタビュアーは畳みかけるようにこう訊ねる。

《――動物の地位向上のために、なにかプランはありますか?
卓「干支の動物たちでアイドルグループを結成する」
瀧「ETO12というわけよ。そしてセンターはこのアタシ!」
――瀧さんがメンバー入り?
瀧「干支の中にはひとつだけ架空の生き物が存在するでしょ?」
――ええ、龍ですね…ハッ!
卓「気がついたかい。そう、瀧からさんずいを取ると龍。こいつは生まれながらにしてETOメンバー入りを約束された動物なのさ」》


『人間と動物』というタイトルから、話がとんでもない方向へと飛躍する、まさに立川談志いうところのイリュージョン。そんなことを繰り返しつつ、40歳をすぎたいまも無理してる感はみじんもなく、常に自然体というのも彼らのすごいところだ。

ライター情報

近藤正高

ライター。1976年生まれ。エキレビ!では歴史・科学からドラマ・アイドルまで手広く執筆。著書に『タモリと戦後ニッポン』(講談社現代新書)など。愛知県在住。

URL:Culture Vulture

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