アニメ『BANANA FISH』(→公式サイト)最終回。
Amazon Prime Videoで配信中。

最終回「バナナフィッシュ」公式の計らいに感動…アッシュとエイジを愛してくれてありがとう「光の庭」是非
最近発売された「BANANA FISH」20巻は、エイジとアッシュそれぞれの前日譚。これと、19巻収録の「ANGEL EYES」「光の庭」で、「BANANA FISH」は真の意味で完結するといっていいほどの傑作

派手なアクションシーンてんこ盛りな最終回。改変を効果的に入れつつ(まさかのドリル!)、爽快感と喪失感の両方を描いてくれた。
百発百中のスナイパーライフルで、ブランカの異様な強さを映像化してくれたのも楽しい。
原作は日中の戦闘だったのを夜中にしたことで、アッシュがシンに未来を諭すシーンが朝日と共に浮かび上がり、よりポジティブになった。

最終回のサプライズ


最終回で、アニメ本編と別の部分でのサプライズがあった。
まずオープニング終了後すぐの、黒地に浮かぶ白い文字。
「石塚運昇氏に感謝を込めて」

ディノ・ゴルツィネ役の石塚運昇は、今年の8月13日に亡くなった。

彼を悼むファンが多かったと共に、ディノの声は途中で変わるのではないか?と不安の声もあがった。
しかし、ディノの声は最後まで、石塚運昇だった。亡くなる前に全部収録していたのだろう。

ディノが撃たれて死に瀕している場面のテロップ。
その後ディノは、ねじくれまくった愛で、自分の命と引き換えにアッシュを救う。火の海に落ちていく時の、愛憎混じった表情は、アニメオリジナル。

石塚運昇の演じるディノの声は、落ち着いた迫力はあったが、単純に怖い「悪」のものではなかった。
その静けさすらある演技が、最終回の儚く散る男、愛の人ディノの姿に説得力をもたせた。
石塚運昇あっての、最高に悪役で、最高に魅力的な人間、ディノだった。

もう一つのサプライズは、公式サイトに仕込まれていた。
ストーリーごとに毎回、人物相関図がアップされている。人間関係が複雑な作品なので、非常にありがたい。

23話まででは、アッシュとエイジは「親友」と線が引かれている。
これが24話終了後の更新で、唯一関係性に名前が付いておらず、ただ太い線が引かれている。
エイジとアッシュの関係は特別なものになった、というのをにおわせる演出だ。
意図的に開かないと気づかないようなところに、こっそり何も言わず潜ませているのがにくい。

光の庭


放映終了後、多くの原作既読者からあがっていたのが「光の庭」をアニメで見たい、という声だった。
「光の庭」は19巻や「BANANA FISH ANOTHER STORY」に収録されている、アッシュが死んでから何年も経った後の、エイジとシンの後日譚だ。


最終回で、アッシュがラオに刺殺されてしまった。
視聴者から、ラオにヘイトが集まってしまうのは仕方ない。ただ、異母兄弟のシンを愛し、救いたいと一人きりで願い続け、ずっとアッシュの隙を狙っていたことを考えると、なんとも切ない。
キャラクターそれぞれが前向きになろうとしても、何もかもを精算できるわけじゃない。
一度歪んでしまった彼らの人生は、どうにもならない部分が残ってしまう。

エイジが日本に帰る飛行機に搭乗するシーン。

アッシュが空港に見送りにこなかった際、シンがエイジを励ますために、嘘をついた。
シン「エイジ!アッシュがまた会おうって!必ずまたアメリカ来いよって!」
この後、アッシュが死んだ真実に向き合った時、エイジとシンがより傷ついてしまうのは、あまりにもやりきれない。

「光の庭」は、アッシュを愛するがゆえに呪縛された、エイジとシンの解放の物語。
最終回のモヤモヤ描写が丁寧だったからからこそ、真の意味で物語が幕を閉じるこの短編に、注目が集まる。

80年台の、半ば神格化されたマンガを、21世紀を舞台に改変して、本当に大丈夫なのかと心配させられた第一話。
様々なアニメのオリジナル要素や、尺の都合のカットの手法まで含め、徹底してアッシュの感情に焦点を当てる、という意思を持った脚本になっていた。
原作をリスペクトしつつ、アニメ「BANANA FISH」としての立派な作品になっていたのが本当に嬉しい。
だからこそ、「光の庭」、OVAとか劇場版とかで、アニメ化しませんかね……? エイジ同様、こっちまでアッシュのしがらみから逃れられなさそうだよ。

(たまごまご)