アニメ『BANANA FISH』(→公式サイト)。
「第21話 敗れざる者」が今日11月29日(木)25:05より、フジテレビ”ノイタミナ”ほかで放送。
Amazon Prime Videoで毎話フジテレビ放送開始1時間後より配信予定。

20話はゴリゴリのアクション回。エイジとシンたちによるパーティー会場でアッシュ奪還、地下鉄での攻防、博物館でのステルスアクションと盛りだくさん。
加えて、ケインの頼もしさが一際目立って表現された回でもある。彼の存在は、激情的なアッシュやシンと異なる、安定したカリスマ感がある。
「バナナフィッシュ」月龍くんちょっと髪長すぎじゃない?ほら言わんこっちゃない20話 
『LisOeuf♪(リスウフ♪)』vol.10 表紙。20話はアクションアクションまたアクション。博物館戦のアサシンっぷりは、尺があればもっと見たかったなあ

月龍は弱いわけじゃないけれども…


今回の月龍は踏んだり蹴ったり。
ディノのパーティーでは、エイジを殺そうとするものの、ボディガード・ブランカに止められてしまう。

博物館では、一人きりになったアッシュ対し、油断しすぎたために捉えられ、人質になってしまうという体たらく。
その際にアッシュにつけられたあだ名が、若様ならぬ「バカ様」
挙句の果てにはディノにこんな皮肉まで言われる始末。
ディノ「あれは凶暴な野生の獣です。深窓のご令息の手に負える代物ではありません。どうかこれからはわれわれにお任せくださいますよう」

彼は薬と毒の使い方に長けているので、暗殺面では飛び抜けた技術の持ち主。
バナナフィッシュに対しても知見があり、頭脳面では上記3人に、劣るとまではいかないくらいの人物のはず。特に口が巧みで、人を挑発する術は身につけている。自らの色香を利用して、相手の懐にも入り込む。多様な技術を持つ、手強い相手だったはずだ。

ただ、彼は白兵戦は一切やらないのだろう。
今回ブランカには吊り輪のようにしばった髪の毛をひっつかまれ、アッシュには髪の毛で首を締められている。
ニューヨークの近接戦では、彼の長い髪の毛は弱点なのを、この師弟はよくわかって利用している。

加えて、今回の彼の行動は少々油断が多すぎる。
ブランカ「月龍様、外にいては危険です。どうか車の中へ」
月龍「大丈夫さ。エイジ君をお迎えしなくちゃね」
ここまですんなりフラグと立ててくると、ちょっとお茶目ですらある。

月龍は今まで冷静沈着に、部下を使って人を殺してきた。
李家の復讐のためにと、虎視眈々と計画を練ってきた。
ところがアッシュとエイジを目の前にすると、感情が先走って何もかも吹っ飛んでいってしまうようだ。
以前、アッシュが自分自身に引き金を引いた時も、彼はその感覚がわからず、呆然としていた。今回も博物館に籠もるアッシュが理解できず、腰が引けてしまっている。
「アッシュの狙いは何なんだ?自分から袋のねずみになるようなことをして」「くっ、そんなにあいつが大事か!」

月龍の空回りは、虚勢の現れでもあるのだろう。理解を超えた存在であるアッシュがいると、自信が崩れてしまう。

嫉妬でもあり、憧れでもある、アッシュへの彼の心情。
アッシュに勝つためにあらゆるものをかなぐり捨ててきたオーサーと、やり方は違えども、心のベクトルは似ている。
上に立つものとしては、この心理は致命的かもしれない。けれどもアッシュに向き合ううちに、月龍がどんどん表情豊かになっているのも事実。ブランカが用心棒を引き受けた時の笑顔は、とても少年らしいものだった。
こっちが本来の彼なんだろう。


エイジと銃


パーティー会場に潜入したエイジが、銃をディノに向けるシーン。
エイジは銃が全く撃てない。かつてアッシュの故郷で練習した時、どんなに近くても外した過去がある。
今回ももちろん、目をつぶってしまい、至近距離で急所を外した。

当たらなくて本当に良かった。
もしここでディノの脳天を貫いたとしたら、すんなり収まっていた事件も多かっただろう。
しかしそれは、アッシュにとってはバッドエンドだ。
アッシュはエイジに、人殺しをさせたくなくて、動き続けてきた。人殺しをした自分を受け入れてくれるエイジに、心救われ、強く信頼してきた。
そんなアッシュが、もし自分のためにエイジが人殺しをする場に出くわしたら、と考えるとゾッとする。

アッシュ「二度とこいつを持たせたくなかった。すまない」
地下で脱走中、何も食べられず弱りきっていたアッシュが、身を守らせるためにエイジに銃を渡した。
エイジに銃は、できれば持たせたくない。アッシュとしても、最後の手段だ。
そこからのエイジのセリフが気持ちいい。
エイジ「謝るなよ、日本人のお株を奪う気?行こうぜボス」
「日本人はすぐに謝る」という、2人で過ごしていた時の話題を、さり気なく出してくるエイジ。
エイジの一言一句が、アッシュの心の栄養となって、回復させていく。

ディノの家で、拒食症になって何も食べられなくなったアッシュ。
水と点滴で生きて、骨と皮状態だった彼が、エイジの温めたスープをすんなり飲んでいる。その後ポロッと、自分を「臆病だ」とまで言っている。
残酷な人生を送ってきたアッシュだが、エイジに出会えた。
今誰がなんと言おうと、彼は幸せだ。
だからこそ、銃のある社会にエイジを巻き込みたくない、というアッシュの気持ちは高まり続ける。
(たまごまご)