いま、盆踊りがキテるようだ。

いや、キテるも何もお盆はもう終わりだし、夏だってとうに過ぎ去ってしまったけれど、盆踊ラーたちの熱い戦いはまだ続いている。

あの『あまちゃん』でブレイクした作曲家の大友良英さんも盆踊りの魅力に目覚めたというし、クラブDJの世界でも「音頭」のレコードをスピンするのが流行りつつあるという。つい先日オンエアされたライムスター宇多丸の「ウィークエンドシャッフル」(TBSラジオ)でも、音頭特集が組まれたというのだから驚きだ。

そして、こんな本も発売された。『盆おどる本 盆踊りをはじめよう!』である。

盆踊りというのは、古来より日本全国で行なわれていて、日本人の魂に根差した風物だが、実は盆踊りについて解説を試みたガイドブックや、初心者のための入門書といったものがほとんど存在しない。
歌舞伎や落語といった伝統芸能と違って、盆踊りは誰もが自由に参加できるもの──言い換えれば、あまりにも庶民に近すぎるが故に、あらためて研究の対象となりにくかったのかもしれない。


『盆おどる本』では、〈「盆おどる」ために知っておきたい20のこと〉と題して、盆踊りの起源から、その役割り、作法、浴衣の選び方など、盆踊りに参加するために必要なあれこれを丁寧に解説してくれる。

一般的に、秋田の「西馬音内の盆踊り」、岐阜の「郡上盆踊り」、徳島の「阿波踊り」が日本三大盆踊りだとされているが、とにかく盆踊りは日本全国通津浦々にあらゆるスタイルのものが存在しているので、正確な総数は把握できていない。これ、逆にいえば、それだけ盆踊りというのは自由なものだってことでもある。

ここで思い出してみよう。昨年レポートした美濃加茂の「ダンシングヒーロー盆踊り」を!

ユーロビートが夏祭りをこれだけ熱くするんだから、クラブDJが音頭でフロアを沸かせても不思議じゃないよね。

これから盆踊りに参加したいと考える人にとって、最初のハードルとなるのは地域のコミュニティに足を踏み入れることだろう。

子供の頃から住み続けている土地ならともかく、大人になり、生まれ育った家を出て、見知らぬ土地に移り住んだ者がその地域の盆踊りに参加するのは、なかなか勇気がいるものだ。

本書では、そのあたりの不安と、それをいかにして取り除いていくかを、チャンキー松本のコミックでうまく見せてくれる。
東京のとある下町に引っ越してきたリュウくんとマリちゃんの若夫婦が、どのようにして町内の盆踊りグループに溶け込んでゆくのか。和菓子屋の亡くなったご主人(盆踊り名人)が生前に残した名セリフ「こわがるな! 考えるな!!!」は、ブルース・リーをも彷彿とさせるかっこよさである。
(とみさわ昭仁)