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描けるわけがない。骨の髄までお子さまランチなんだから「ドラえもん」藤子・F・不二雄の自虐にドラ泣き

2014年9月16日 10時30分

ライター情報:大山くまお

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『ちくま評伝シリーズ〈ポルトレ〉藤子・F・不二雄』筑摩書房編集部

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映画『STAND BY ME ドラえもん』が大ヒットを記録中だ。興行収入はすでに50億円を突破、邦画としては今年一番のヒットとなりそうな気配である。フーンといった感じだ。

今年は「藤子・F・不二雄生誕80周年記念」と銘打たれ、数多くのイベントや出版が行われているが、それらの流れとは別に、筑摩書房より刊行されたのが『ちくま評伝シリーズ <ポルトレ> 藤子・F・不二雄』である。

「ちくま評伝シリーズ<ポルトレ>」とは、筑摩書房が立ち上げた中高生向け近現代人の伝記シリーズ。装画をイラストレーターの寺田克也、装幀を人気ブックデザイナーの名久井直子が手がけている。

第1期全15点のうち、8月下旬に
「スティーブ・ジョブズ」
「アルベルト・アインシュタイン」
「マーガレット・サッチャー」
「長谷川町子」
「藤子・F・不二雄」の5点が同時に刊行された。漫画家が2人もラインナップされているところが面白い。

数多くの参考文献からまとめあげた伝記ということで、『藤子・F・不二雄』の内容はファンにとってよく知られているエピソードが多い。生い立ちから手塚治虫との出会い、そしてトキワ荘での日々などに関しては、全国民必携の基礎教養書・藤子不二雄Aの『まんが道』とも被っている。

この本のポイントは、藤子・F・不二雄(以下、F先生)の2つの大きな挫折をクローズアップしているところだ。

藤子不二雄、漫画界から追放!

最初の挫折は21歳のとき。郷里の高岡から上京した藤子不二雄の2人(藤本弘=F先生と安孫子素雄=A先生)は、折からの少年漫画ブームとも相まって早々に人気漫画家としての道を歩みはじめていた。次々とやってくる話はどれも魅力的なオファーで、デビューしたての新人漫画家だった2人には到底断ることなどできなかった。

箸を使わず食べることができる食料を買い込み、食事をしながらもペンを走らせ続けた。70時間不眠不休で描き続けることもあったという。そんな生活が3カ月続いたが、それでもオファーは止むことがなかった。気が付けばすでに年末。日々の仕事に疲れ切った2人は、仕事の締め切りを抱えたまま母の待つ故郷に里帰りすることを決める(2人とも幼くして父を亡くした母子家庭だった)。しかし、気が緩んだ2人はもう元のように漫画を描くことはできなくなってしまった。里帰りしたまま、抱えていた連載や読み切りなどいくつもの仕事を全部落としてしまったのだ。全部。

ライター情報

大山くまお

ライター。著書に『野原ひろしの名言』『野原ひろしの超名言』(双葉社)、『名言力』(ソフトバンク新書)、『中日ドラゴンズあるある』(TOブックス)など。

URL:Fire Stone and Water

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