算数ゲームのアイディアを考えて、一枚の画用紙に企画書としてまとめよう!

こんなユニークなイベントが、2013年11月16日と17日に、東京・有明のパナソニックセンター東京 リスーピアで開催されました。一部が講演、二部がワークショップで、対象は小学5年生以上のお子さんを含む親子連れ。
二日間でのべ100名以上の親子が参加しました。

講演と司会をつとめたのは、きっしー先生こと東京工科大学の岸本好弘先生。元ナムコで「ファミスタ」シリーズを作った、伝説のゲームクリエイターです。講演中、壇上からどんどん子供たちに質問を投げかけ、ぐいぐい引っ張るきっしー先生。大学生による寸劇も披露され、子供たちは算数の重要性を、RPGの勇者におきかえて学びました。続くワークショップでは大学生のサポートを受け、企画書作りに挑戦しました。


おもしろいなーと思ったのが、コックとなって算数の問題を解きながら料理を作る「カルクック」。小学5年生のヒビキ君が考えたアイディアです。タイトルは「カリキュレーション」と「クッキング」をあわせた造語で、これだけでもセンスあり。計算問題に答えると料理が作られていくシステムで、ラスボスはフルコースのディナーなんだとか。ちゃんと難易度の概念まで入っているのには驚きました。

一方で、きっしー先生をうならせたのが「プライムシュート」という企画。
サッカーゲームと思いきや、実は素数を英語で言うとプライムナンバー。つまり素数を次々に当てていくゲームだったんです。その発案をした子供は「グラハム数」=ギネスブックにも認められた最大の数=を好きな算数としてメモしており、「大学の先生である僕が子どもに教えられちゃった!」と、ビックリされていました。

ワークショップの最後は子供たちが一人ずつ、一分間ずつプレゼンタイム。「算数とゲームがつながって楽しかった」「人を楽しませるゲームを考えるのは、思った以上に難しかった」「次は小学1年生から遊べるゲームを考えたい」「大学生のお兄さん、お姉さんたちが手伝ってくれて、とても嬉しかった」なんて感想も聞かれました。教室で習う算数の授業と違って、自由に考えられるのが、みんな嬉しかったようですよ。


さてさて、このワークショップ、ゲーム業界人なら見覚えがあるかもしれません。ゲームの国際会議「CEDEC」の名物となっている、「ペラ企画コンテスト」とまったく同じなんです。特定のテーマを元にゲームのアイディアを考えて、A4のコピー用紙一枚にまとめるコンテスト。つまりプロと同じ課題に、子供たちがチャレンジしたというわけです。さすが、きっしー先生、子ども相手でも手を抜きません!

ただ、いざペラ企画書を書くといっても、けっこう大変です。そこで、きっしー先生は「優れたアイディアのまとめかた」として、次の三点を紹介しました。
また、趣味でも食べ物でもテレビ番組でも、なんでも自分の好きなものを大量に書き出して、それとテーマ(ここでは算数ゲーム)を組み合わせると良い、と補足しました。

1.おもしろそうなタイトルを書く
 「サッカーを利用した算数ゲーム」などよりも「怪盗ナンバー」などの方が良い
2.絵をいっぱい描く
 文字よりも絵の方がたくさんの情報量をわかりやすく伝えられる
3.どう操作するか書く
 「敵にぶつからないように迷路のドットを全部食べる」など、操作の概要を書く

具体例に示されたのが、マンモスなどの敵から計算で村を守る「守れ!算数村」。お父さんは戦闘力5、お兄さんは3、子どもは1など、村人には戦闘力が決まっています。一方で猛獣にもそれぞれ戦闘力が設定されており、計算式を駆使してピッタリの戦闘力になるように、村人でパーティを組んで撃退していく内容。企画書にはマンモスが大きく描かれ、タイトルもキャッチーで、パッと見て分かる内容です。いやー勉強になります、はい!

ちなみに、きっしー先生は大学で「ゲームの力を教育・社会に役立てる」をテーマに、「次世代ゲーミフィケーション」を研究中です。
昨年度の東京大学との共同研究内容をベースとして、今年11月7日にベネッセコーポレーションがβ版を公開した数学ゲームプラットフォーム「GlobalMath」にも、今後数学ゲームを提供予定です。

んでもって、本イベントの影の仕掛け人となったのが、このベネッセコーポレーション。東京工科大学・東京学芸大学の二大学の協力を得て実施されました。ワークショップでは、東京工科大学の学生はゲームの観点から、東京学芸大学の学生は数学教育の観点から子供たちにアドバイスをして、両大学生が協力して子供たちをサポートする姿も見られました。

なお、子供たちが作成したペラ企画は、きっしー先生のコメントつきで、12月下旬にウェブ上で公開される予定です。今後、優秀な企画は実際にゲームとして開発され、「GlobalMath」で遊べるようになる予定とか。
子供たちが考えた算数ゲームの企画が、実際に形になって多くの人に遊ばれるようになるって、とても素敵ですよね。これがきっかけで、将来ゲームクリエイターになる子供がでてきても、おかしくない。いやー楽しみです!
(小野憲史)