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今夜金曜ロードSHOW「火垂るの墓」節子を殺した真犯人は誰なのか

2015年8月14日 10時50分 ライター情報:多根清史

『火垂るの墓』は節子を死なせた犯人を探す倒叙ミステリーだ!


夏の恒例行事、『火垂るの墓』日本テレビ系列での放送が今年もやってきました。今回は終戦記念日前日に当たる8月14日。野坂昭如氏が自らの戦争体験を元にした小説が原作だけに、これ以上ふさわしい日にちはないでしょう。
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公開当時は、宮崎駿監督の『となりのトトロ』と同時上映になったため、トラウマ力も跳ね上がりました。トトロや猫バスに夢中になった後、全身ヤケドで包帯ぐるぐる巻き、ウジの湧いた母親を遺体の山に放り込む光景を見せられたお子様は、心に素敵なサムシングが残ったかもしれません。
そういうトラウマ語りを始めてから、今年で28年目。そろそろ違った見方をしませんか?
冒頭であっけない死を遂げる、主人公で戦災孤児の清太。その霊は時間をさかのぼり、妹の節子が享年4歳で死ぬまでの時間を繰り返します。
初めに結末が明かされ、「どうしてそうなったか」を追っていくーーこれは最初に犯人を明かしてから、刑事が真相を突き止める『刑事コロンボ』のような倒叙ミステリーと同じ構造です。
『火垂るの墓』は、こう言い換えられるのではないでしょうか。「誰が節子を死なせたのか?」事件であると。

被疑者その一:西宮の叔母さん


実際、まいど『火垂るの墓』の放映直後にネットで盛り上がるのが「節子を死なせた真犯人探し」です。直接の原因は栄養失調として、なぜ、誰のせいでそうなったのか。
 初めて見たビギナーが真っ先に指差すのは、兄妹二人を引き取った西宮の叔母さんでしょう。
清太が持ってきた食糧を取り上げ、母の形見である着物と物々交換でもらったコメもピンハネ。自分の娘や下宿人にはおにぎりを持たせるのに兄妹には水のような雑炊だけ、清太が家を出ていくときも「せっちゃん(節子)サイナラ」のひとこと。お前かー!
さらに二回目を見ると、印象がガラリと変わるはず。おばさんは未亡人で、下宿人を住ませてるのも家計の助けにするため。清太は地元の学校に誘われても行こうとせず、防火活動(空襲による火災を消すため)もサボりも、コメなどの配給の対価になる働きもまるでなし。叔母さんのピンハネも「養育費」や「家賃」と捉えれば頷けます。
 アニメ版が恐ろしいのは、原作小説にあった叔母のイジメが削除され、まっとうな正論しか残っていないこと。清太が叔母との食卓を拒んで自炊を始めた時に「まるであてつけやん」というのは単なる事実で、陰口ではなく大声で聞こえるように言ってるのは「謝ったら許す」サインでもあります。

ライター情報

多根清史

1967生。『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)『宇宙世紀の政治経済学』(宝島社)など。

URL:Twitter:@bigburn

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