今注目のアプリ、書籍をレビュー

0

「わたしを離さないで」の性教育

2016年2月12日 09時55分 ライター情報:杉江松恋
このエントリーをはてなブックマークに追加
『わたしを離さないで』、先週放送された第4回のテーマはセックスだった。
セックス。
しかし、哀しく、侘しく描かれたセックスである。
冒頭の保科恭子(綾瀬はるか)によるナレーションがすべてを言い表している。

わたしたちがいるのはあらゆる可能性が剥ぎ取られた世界だから。
その中で幸せになる方法はとても、とても限られている。
たとえばそれは。

すべてを忘れ、その場限りの感情と快楽に没頭するだけの刹那の行い。
そうしたものとして「わたしを離さないで」はセックスを描いた。

カズオ・イシグロの人生狂騒曲


先週のレビューでも少し触れたが、カズオ・イシグロの原作小説『わたしを離さないで』においてセックスは、キャシー・H(ドラマにおける保科恭子)をはじめとする、「提供」を義務付けられて生まれてきたひとびとの無垢さや、彼らを管理する側の偽善性を際立たせる要素として用いられている。
キャシー・Hたちが育った施設、ヘールシャム(ドラマにおける陽光学苑)では性教育の授業も行われるのである。それも「生物学教室から等身大の骨格模型を持ち込み、それを使ってセックスとはどうするのかを見せ」るというやり方で。

等身大の骨格模型!
失礼ながらこのくだりを読んだとき、私の頭に浮かんだのは映画「モンティ・パイソンの人生狂騒曲」で描かれた性教育のコントだった(校長のジョン・クリーズが直々に妻とのセックスを披露して生徒たちに教える)。いや、この映画を連想したのは偶然ではないのかもしれない。なにしろ「人生狂騒曲」は、「人が生まれてから死ぬまでの7つの舞台」をオムニバス形式で描いた、壮大な人生絵巻だからだ(本国では1983年に公開されたこの映画をイシグロも観ているのではないかと思うのだが、どうなのだろうか)。

大人の階段昇る?


それはさておき、ヘールシャムにおける性教育は「骨格模型による実演」が象徴するように、よそよそしく、上滑りなものだった。エミリ先生(ドラマでは麻生祐未が演じる神川恵美子先生)は言う。「自分の体を恥じてはなりません、「肉体の欲求を尊重する」ことが重要です、双方がそれを望むなら性行為は「相手へのとても美しい贈り物です」と。さらに性教育の授業では、こんなことも告げられたのだった。

「[……]とくに、施設卒業生以外の人とするときは注意が必要です。外の人にとって、性はとても大きな意味を持っていて、誰が誰としたかで殺し合いさえ起こるほどです。

ライター情報

杉江松恋

1968年生まれ。小説書評と東方Projectに命を賭けるフリーライター。あちこちに連載しています。

URL:Twitter:@from41tohomania

コメントするニャ!
※絵文字使えないニャ!

注目の商品