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今夜4話「火村英生の推理」本当に仲がいいなあ

2016年2月14日 10時00分

ライター情報:杉江松恋

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日本版サルバドール・ダリといえばあの人でしょう!
「臨床犯罪学者 火村英生の推理」第4話「ダリの繭」を見ながら思わずつぶやいていた。
いや、大泉滉はもう鬼籍に入っていて、この世の人ではないのだった。
調べたら1998年に亡くなっていたことがわかり、一気に時の流れを感じてしまった。
日本版ダリを岩城滉一が演じたということにも隔世の感がある(あ、滉の字が同じだ)。
『ダリの繭 』有栖川有栖/角川文庫

初の都会派ミステリー


今回の原作『ダリの繭』は1993年12月に角川文庫から刊行された。最初の本が文庫というのは現在では珍しくないが、当時は目新しい趣向に感じたことを覚えている。実はこれ、〈角川ミステリーコンペティション〉という企画の一環をなす作品なのである。本書の著者・有栖川有栖のほか、姉小路祐、阿部智、井上淳、岩崎正吾、折原一、香納諒一、黒崎緑、鳥羽亮、新津きよみ、乃南アサ、服部まゆみ、吉村達也(五十音順)といった面々が参加し、刊行作品の中から読者投票で一位を決めるという趣向の試みだった。
エッセイ集『有栖の乱読』の記述によれば「フロートカプセルの中で見つかる死体」というイメージから出発した作品であるという。有栖川の作家業としては5冊目、また作家アリスシリーズとしては2作目の長篇である。『有栖の乱読』にはこんなことが書かれている。

──私の長編小説は、都会の人間が辺鄙なところに出掛けていって恐怖に遭遇する、というパターンになりがちなので、今回は都会的なものばかりを素材に書いてみることにした。

犠牲者は今様サルバドール・ダリを気取る宝飾品チェーンの社長、美貌の秘書を巡る恋の鞘当てがあり、容疑者も会社の関係者にほぼ絞られる。キャラクター配置や小道具などが、確かにすべて都会的な印象のものに統一されている。殺人現場となった社長の別宅の所在地も原作では六甲山中、神戸市の100万ドルの夜景を見下ろす場所に設定されているのである。本書以前の有栖川の著作は、ミステリーに強い東京創元社と、当時ミステリーを多く出版して〈新本格〉ムーブメントの牙城となっていた講談社ノベルスの2レーベルで刊行されていた。そこから離れ、いわば他流試合に臨むということで、新しい読者層に向けて書いてみたい、という意気込みが作者にはあったのではないか。

初めて明かされるアリスの過去


火村&アリスチームの2冊目の作品ということもあり原作では、第1作『46番目の密室』で登場させた2人にもう少し肉付けを施そうという作者の意図も見てとれる。

ライター情報

杉江松恋

1968年生まれ。小説書評と東方Projectに命を賭けるフリーライター。あちこちに連載しています。

URL:Twitter:@from41tohomania

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