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「昭和元禄落語心中」8話。落語家と結婚すると不幸になる説

2016年3月4日 10時00分 ライター情報:杉江松恋
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「落語がちゃんと生き残る道を作ってやりてえんだよ」(有楽亭助六)
「落語は、生き残るだろう」(同菊比古)

別々の道を歩む


助六と菊比古、それぞれの落語観が浮き彫りにされた先週の「昭和元禄落語心中」だった。高度成長期に入り、人々の生活が豊かになると共に娯楽も多様化した。その中で落語は時代遅れになってしまうのではないかと焦り、新世代に向けて生まれ変わるべきではないかと考える助六に対し菊比古は、それでは落語が落語ではなくなってしまう、と懸念を示す。
実はこのやりとり、雲田はるこの原作『昭和元禄落語心中』第3巻にはない、オリジナルの会話だ。しかしこのやりとりは、第3部「助六再び編」の伏線にもなっているのである。

師匠・七代目有楽亭八雲にハマり、旅にも連れて行ってもらうほどに可愛がられる菊比古と、楽屋での評判が悪く、昇進にも反対する声が絶えないらしい助六。しかし周囲の声をよそに2人はついにそれぞれの落語観を確立し、別々の道を歩むに至る。

そして菊比古とみよ吉の関係にも決定的な出来事が起きる。師匠・八雲から菊比古は、きちんとした家の娘さんを嫁に貰うため、みよ吉を遠ざけるように命じられてしまうのだ。まだ二ツ目の菊比古は、その言葉に逆らえない。

というわけで第8話は、2つの別離が描かれる重要な回となった。事態は風雲急を告げる。これからが見ものだ。

昭和の噺家の結婚観とは?


アニメを見ながら、みよ吉への仕打ちに憤慨したファンも多いだろうと思われる。
では昭和の大看板と呼ばれた落語家たちは、良家のお嬢さんと結婚するのがならわしだったのかというと、別にそんなことはないのである。たとえば五代目柳家小さん(先代。故人)の生代子夫人は高円寺で芸人の溜まり場のようなバーをやっていた。前座名・栗之助時代からそこに出入りしていた小さんは、初め生代子夫人から芸人として贔屓にしてもらっているような間柄だったという。
昨年亡くなった橘家圓蔵(八代目)は最初月の家圓鏡の名前で売れたが、夫人の名前を出すのが好評を博し(同じように「ヨシ子さん」で売れた兄弟子・林家三平のアドバイスだった)して「うちの節子が」がキャッチフレーズになった。その節子夫人は、圓蔵の大師匠、つまり七代目林家圓蔵の師匠である八代目桂文楽宅の、住み込みのお手伝いさんだったのである。前座名・竹蔵時代の圓蔵は、師匠の命により文楽宅にやはり内弟子として入っていた。若い2人が同じ3畳の女中部屋に寝泊りしていれば、割りなき仲になるのも当然だ。

ライター情報

杉江松恋

1968年生まれ。小説書評と東方Projectに命を賭けるフリーライター。あちこちに連載しています。

URL:Twitter:@from41tohomania

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