4月28日、29日に幕張メッセで開催されるニコニコ動画の一大イベント「ニコニコ超会議」。夜に行うライブ「ニコニコ超パーティ」では広瀬香美やきゃりーぱみゅぱみゅが出演することも決定し、盛り上がりを見せている。

そんな超大型イベント「ニコニコ超会議」のカンファレンスのひとつに、「超クリエイターズサミット」がある。
ニコニコ動画で人気の「作ってみた」「ボカロPV」「ユーザー生放送」「手描きMAD」など、全部で10種類のカテゴリから、動画をアップしている「クリエイター」たちが集結。動画作りについてや、ヒットさせるコツについて話していく。
今回は「超クリエイターズ」にも登場する「ゲーム実況」から、大人気ゲーム実況者、レトルトさんにインタビューを行った。おれはいまライターをやっているけど、4、5年ほど前、ニコニコ動画でゲーム実況をしていたことがある。ゲーム実況、いまと昔でかなり違うのか、それとも違わないのかも聞いていきたい。



ソフトも全部合わせたら400本

――僕も2007~2009年ころまでゲーム実況をやっていて。
レトルト あ、ですよね。観ていました。
――ありがとうございます。いまと当時でゲーム実況のやり方ってどう変わってるのかなと。
レトルト まったく違いますね。
昔はレトロゲームが主流で、動画編集も入れずにノーカットでアップするのがふつうでしたけど、いまは編集がないとダメですね。「垂れ流し動画」という概念がなくなっていて、グダグダって言われちゃいます。
――そうなんですか。よりエンターテインメントになってきている。レトルトさんが最初に動画を投稿したのは2008年12月、「図鑑片手にポケモンスナップ実況プレイ part1」からですよね。実況をはじめたきっかけは?
レトルト もともと「ゲームセンターCX」がすごい好きだったんですよ。

――あー、「ゲームセンターCX」からゲーム実況に入る人って多い。
レトルト そのあとニコニコ動画でゲーム実況というジャンルがあるのを知りました。調べたらやり方を書いているサイトや実況者さんがいたので、けっこう簡単に有野課長と似たようなことができるんなと。
――当時、どんな実況動画を観ていました?
レトルト はじめて観たのがイボーンさん「初めてポケモン(赤)をやってみた~実況付き~」。あとは、ちょいさんhacchiさんが好きでした。
――僕はゲーム実況はじめたころ、思うようにしゃべれなくて、というか、PCの前にひとりで、何をしゃべればいいか全然わからなかったんですよね。
だから身内のこととか、身の回りで起きたことなんかを話していくスタイルになったんですけど、最初のころは緊張しませんでした?
レトルト しましたよー。ゲームをしながらしゃべる行為自体が恥ずかしいというか……、照れますよね(笑)。
――そうそう。無理やりキャラクターつくってしゃべったり。
レトルト 素の自分じゃないってところもまた恥ずかしいんですよね。いまはもうぱっぱっと撮っちゃいます。

――どのくらいから慣れてきました?
レトルト 半年くらい経ってからですかね。自分のスタイルというか、こういう感じでやればいいんだなってじょじょにわかってきました。
――動画に付けられたコメントとかは見てます?
レトルト はい。ゲームの攻略やヒントを見逃したときにツッコミがはいるので、あ、これここにあったのかーってやり直したり。コメントを見ながら攻略していきました。
――視聴者参加型みたいな。
レトルトさんの動画はものすごい伸びているじゃないですか。「『青鬼6.20』の核心に迫る part1【実況】」だと、約67万再生。どのくらいから伸びてきたなと感じました?
レトルト はじめて1年半くらいのとき、ゲームカテゴリランキングの100位以内に入りました。そのときようやく注目されはじめたのかなと。嬉しかったですね。そこからジワジワ再生数が増えていったという感じでしょうか。
――「ゲームセンターCX」の話に戻りますけど、いったいどこがよかったんでしょう。
レトルト 最近はたまにありますけど、ゲームをテレビで取り上げることってあんまりなかったじゃないですか。番組のなかでチラっと出てきただけでも、おっ! って食いついたり。でも、「ゲームセンターCX」は丸々一本ゲームを攻略する。しかもレトロゲームで、エンディングまで観ることができるのは衝撃的でした。僕もレトロゲームをやりたい! と思ってよく買いに行きました。
――番組のDVDを買うんじゃなくて、取り上げたゲームの方をなんだ。なにを買ったんですか?
レトルト 有野課長は昔の難しいアクションゲームをよくやっていますよね。僕も昔投げ出したアクションゲームをやろうと思って「魔界村」とか「悪魔城ドラキュラ」を買ってきて、クリアするまでやろうみたいな。
――へえ~。ファミコンがメイン?
レトルト ファミコンとスーパーファミコンは持っていたので、PCエンジンとメガドライブを買いました。「ゲームセンターCX」を観るまで知らなかったゲーム機です。
――本体まで買っちゃったんだ!
レトルト ソフトも全部合わせたら400本くらい。
――すごいっ! それもほとんどクリアして?
レトルト いや、全然クリアできてないです。50本くらいかな。だって難しいんですよ(笑)。


これは文字のバランスが悪いな

――実況動画を撮る上で気をつけていることって?
レトルト やっぱり無言にならないように、極力しゃべるように気をつけています。
――わかるわかる。そうですよね。しゃべるネタがなくなって2、3秒間があいただけでもすごい恐怖。
レトルト 集中すればするほど黙っちゃいますから。
――なんで実況しているんだろうなって思ったりは。 
レトルト たまーにありますね。実況せずにもくもくとやりたいなとか。
――実況するゲームを選ぶとき、すでに遊んだことがあるものじゃなくて、はじめてプレイするゲームを選んでいますよね。詳しいゲームを実況したりとかはしないんですか?
レトルト 解説しながらとかでしょうか。うーん、ないですね。
――なぜ?
レトルト 実は以前、得意なゲームの解説実況を撮ったことがあるんですよ。でも、僕は決まった事柄を説明するのが苦手で、グダグダな内容になってしまった。そういう理由でお蔵入りにした動画はけっこうありますね。
――そうなんだ。お蔵入りにする条件は?
レトルト 自分で動画を見返したときに、一切クスりともしなかったら、これはダメかなって。
――それはたとえば「なんとかかんとかの実況 Part30」みたいに、長く続いている動画でも?
レトルト それはもう仕方ないので、面白くなくてもアップしちゃいます。お蔵入りにするのはPart1だけですね。Part1が面白くないと、その次を続けて観ようという気にはならないですから。
――動画タイトルはどうやってつけています?
レトルト 昔はなんとなく付けてました。いまは同じゲームをやっている人が大勢いますから、似たようなタイトルにするのはまずいですし。メモ帳でたくさん候補を出して、これは文字のバランスが悪いな……、という風にやってます(笑)。
――ははは。自分のなかで気に入っているタイトルは?
レトルト なんだろう。あっ、「勇者30」の「【勇者30】30秒で世界を救う勇者達の物語【実況】」です。タイトルだけ見て「どんなゲームなんだろう」と思ってくれた人がけっこういたんですよ。これは気に入っています。
――わかりやすいのって重要ですよね。人の動画タイトルで印象に残っているのはあります?
レトルト 最終兵器俺達さん「【実況】全く推理しない名探偵コナン」というのがずるいと思いました。「コナン」なのに推理しないんだって、まったく逆のことが書いてあると、どういうこと? って惹かれちゃう。昔よりもいまのほうがタイトルは重要ですね。動画が増えてきている分、ライバルも多くなっているので。


いまは個人戦

――いまも実況動画は観ています?
レトルト ちょくちょく観ています。いま面白い人たちがいるんですよ。いい大人達という集団実況者。
――へえ、集団って、何人組なんですか?
レトルト 最大8人でやっているんですよ。
――そんなに!?
レトルト ふつう8人もいたらごちゃごちゃになるじゃないですか、でも、この人たちはキャラクターも立っていて、すごくわかりやすい。
――レトルトさんは基本ひとりで実況をしていますよね。他の人とやることは。
レトルト ないですね。生放送とかで他の実況者さんといっしょにやることはありますけど、実況動画に関してはひとりです。あ、「マリオカート」や「どうぶつの森」を何人かで、それぞれ実況する、みたいなコラボはあるんですけど。
――いっしょにやろうとか誘われたりしませんか?
レトルト めったにないですね。実際に会うとなると難しいのかも。
――僕は4人組で実況をやっていたんですけど、ほとんどスカイプでしゃべりながら動画を撮っていましたよ。
レトルト スカイプでもできなくもないけど、うーん、どうなんだろう。
――あまりやってみたくはない?
レトルト やってみたいです! 友だちの家でゲームをやっている風な実況は好きなので。僕は勢いだけで実況しているので、落ち着いた人と組んでやってみたいかも。
――僕がやっていたころは、ゲーム実況を通じて、会って仲良くなって、じゃあ一緒に実況やるかってことも多かった。それを観ている視聴者たちが、「あいつらは○○組だ」って名前を付けていった。いまもそういうことがあるのかなって。亀戸組とかコイケヤ会とか囲炉裏組とか。
レトルト ありましたねー。でも、ないんじゃないでしょうか。仲が良い人たちはたくさんいると思うんですけど、集まって実況はしていない気がする。いまは個人戦ですね。


ゲーム実況じゃなくてもいいかも

――4月27日、28日に幕張メッセで行われる「ニコニコ超会議」。レトルトさんは28日の「超クリエイターズサミット」に出演。「ゲーム実況への考えや、ウケるコツ」などを話していくとありますね。
レトルト 最初にオファーがきたとき、すごく嬉しかったです。僕のことを知っていてくれたんだ! って。
――レトルトさんのほかには、セピアさんアブさんぞのさんコジマ店員さんがゲーム実況者として出演されますね。
レトルト はい。ほかの実況者さんたちと、リアルに実況についておしゃべりしたり、相談する機会はあまりないので、そういうところも楽しんでいきたいですね。
――けっこう楽勝ムード?
レトルト そんなことない、緊張してますよ!(笑)。当日はガチガチだと思います。……気合い入れていかないと。
――最後に一言ありましたら。
レトルト 今後はいろいろなジャンルをやりたいと思っているんですよ。いままでやったことのない解説実況とか、ゲーム実況じゃなくてもいいかもしれない。2008年から実況をやってきているので、けっこう長いんですよね。飽きずに見続けてくれてありがとうございます。そして、「クリエイターズサミット」。見に来てくれる人の期待に添えるように頑張りたいと思います。
(加藤レイズナ)

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