『けものフレンズ』たつき監督の降板騒動 対立する両サイドの言い分、どう収束するか
『けものフレンズ』公式サイトより

大人気アニメ『けものフレンズ』を手がけた、たつき監督が同作品を降板することが判明し、ファンの間に波紋が広がっている。KADOKAWAによって降板が決定したとする監督側と、たつき監督を擁するアニメ制作会社・ヤオヨロズの方から辞退の申し出があったとする製作委員会側と、互いの主張が食い違っている。


アニメ界の大物も「一体誰にどんな得があるのか?」


アニメ第2期制作への期待が高まる中、たつき監督は9月25日にTwitterで、「突然ですが、けものフレンズのアニメから外れる事になりました」と電撃発表。「ざっくりカドカワさん方面よりのお達しみたいです。すみません、僕もとても残念です」と吐露した。

社会現象とも言えるヒットを飛ばした『けものフレンズ』だが、かなりの少人数で制作していたらしく、たつき監督が作業の大部分を一手に背負っていたことが複数のインタビューなどで明かされている。つまり、たつき監督が降板するとなると、今後の『けものフレンズ』がまったく違った作品になる危険性もある……。

たつき監督の続投を求める署名運動もネット上で起こり、9月27日現在、なんと賛同者は4万6000人を突破。株式会社MAGES.代表や学校法人角川ドワンゴ学園理事、株式会社ドワンゴ取締役などを務めるアニメ界の重鎮・志倉千代丸氏も「一体誰にどんな得があるのか?いちクリエイターとしても気になるところ。更なるビジネススケールを狙った『個』から『組織』への進化だとするとその副作用は大きいね…」もTwitterで疑問を投げかけるなど、業界関係者も言及するほどの騒動となった。

製作委員会は「ヤオヨロズが辞退した」


KADOKAWAに批判が殺到する中、『けものフレンズ』公式サイトにて9月27日、「今年1月~3月に放送されたTVアニメーションと同様の体制を優先として、視聴者のご期待に沿えるべく調整をしておりましたが、アニメーション制作会社であるヤオヨロズ株式会社より8月に入った段階で辞退したい旨の話を受け、制作体制を一から模索することになっているのが現状です」という報告文が製作委員会「けものフレンズプロジェクトA」名義で掲出された。

報告によると、アニメ制作を担当していたヤオヨロズに「関係各所への情報共有や連絡がないままでの作品利用」があったとのこと。そこで情報の事前共有を求めたところ、ヤオヨロズから「条件は受け入れられないので辞退したい」という回答があったと明かしている。

疑問がいくつも残る展開


真っ向から食い違う両者の言い分。次はヤオヨロズ側からの公式発表が待たれるところではあるが……。しかし、8月の時点で辞退の申し出があったということは、それ以降に発表された企業コラボなどの『けものフレンズ』関連映像は一体どんな位置づけだったのか?

また、テレビシリーズ放送終了後にたつき監督が「12.1話」として新規映像を公開した際、『けものフレンズ』プロジェクトにおいて原案に近いポジションとされているイラストレーターの吉崎観音氏は、「最後の打ち合わせで、終わった後も自由に作っていいですよって言ったらたつき監督の目がキラーンってした気がしてたんだけど…まさか!」とツイートしていた。
こちらは口約束のようなニュアンスではあるが、作品利用のための許諾において関係者間で何か行き違いがあったということか? 

“優しい世界”の夢から覚めた


相変わらず不明な点は多いが、どうやらたつき監督個人ではなく、KADOKAWAとヤオヨロズ間でトラブルになっていることに間違いはなさそうだ。となると、監督だけでなく一部キャストが降板する可能性も浮上してくる。なぜかというと、ヤオヨロズは本来、芸能事務所ジャストプロのアニメーション事業部という位置づけであり、『けものフレンズ』にはジャストプロ所属声優も起用されている。両者のトラブルが深刻なものであれば、ジャストプロ所属の声優も降板という事態になってもおかしくない。

この騒動はどのように収束していくのか――。『けものフレンズ』は、悪人のいない優しい世界が「癒される」として人気を集めた作品だったが、舞台裏はなんとも生臭いことになっていたらしい。そのため「夢が覚めた」と嘆く声は多く、たとえ騒動が落着したとしても、ファンが以前と同じように作品を楽しむことは難しいかもしれない。

(HEW)
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