喫煙をめぐり教授と論戦それで仕事はクビに
──ただ、マスコミの自主規制のせいもあってか、小谷野さんに同調する声はあまり聞こえてきませんね。
小 喫煙者には個人主義者が多いですからね。
──首都圏のJRのホームはとうとう全面禁煙になってしまいましたね。
小 会社でつらいことがあって、帰りに「あ~、まいったなぁ」とプラットホームで一服して、「ま、明日も頑張るか」と安らぎを取り戻す。
──教育現場における喫煙者の締め付けも、厳しくなっているようですね。
小 私は昨年、非常勤講師を務めていた東京大学駒場キャンパス内で、下井守教授と歩行禁煙の是非をめぐって口論をしました。結局それが原因で、私は非常勤講師を雇い止めになってしまった。その理由は、構内で喫煙したことよりも、どうやら事の顛末をブログに書いたことがまずかったらしい。
──養老孟司氏は、「禁煙ファシズムは、何かを隠蔽するためのスケープゴートに違いない」と指摘しています。
小 同感ですね。具体的には、自動車の排気ガス、携帯電話の電磁波など、
資本制の根幹を支え、なおかつ体に悪影響を与えそうなものから目をそらすために、タバコがやり玉に挙げられているように思います。
──このまま加速すると、日本から愛煙家がいなくなってしまいそうですね。
小 いや、アメリカの禁酒法は13年で終わったし、日本には売春防止法があるけど売春はちっともなくならない。それと同じで、タバコもなくならないでしょう。体に悪いかもしれないけどやめられない、ってものが人間にはあるんですよ。
そういえば最近、禁煙ソープランドというものがあるみたいですけど、ソープでノースキンで遊ぶことのほうが、受動喫煙より怖いんじゃないですか? というか、それってそもそも違法じゃないですか? と突っ込まずにはいられませんよ(笑)。
(構成=岡林 敬太/サイゾー6月号より)
●小谷野 敦(こやの・とん)
1962年、茨城県生まれ。東大英文科卒、同大学院比較文学比較文化専攻博士課程修了。学術博士。
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