日本の「大学入試センター試験」に相当する「高考(中国 全国統一考試)」が6月7~8日の日程で行われた。中国教育省によると、今年の受験者数は942万人を超えたという。

日本のセンター試験の受験者数は56万人(2015年)だから、その多さはさすがというしかない。さて、さまざまな事件やエピソードが報じられる高考だが、今年も入試初日から多くの事件が勃発した。早速、ご紹介したい。

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■カンニング対策にドローン投入!

 河南省洛陽市内の試験会場では、なんとカンニング対策のためドローンを投入。各種カンニンググッズは無線電波で信号を送受信して行われるため、無線状況を監視するドローンを会場周辺に飛行させてチェックしたのだという(「BBC中国」8日付)。

■替え玉受験組織が暗躍!

 中国の大学入試で毎年必ず起こるのが、替え玉受験。
今年も例に漏れず、各所で発生した。「新京報」(9日付)によると、入試初日7日、中国江西省南昌地区の試験会場で、替え玉受験を行ったとして関係者9人を逮捕。事件発覚のきっかけは「南方都市報」の記者による、替え玉受験組織への潜入調査だった。

 この記者はインターネット上で替え玉受験を請け負う組織に接触、偽造された身分証と本物の受験票を組織から受け取り、7日の試験に臨んだ。その後、記者は現地警察に報告し、事件が明るみになった。記者の潜入取材に関して賛否両論はあるが、多くのネットユーザーからは、記者のおかげで不正が暴かれたと、称賛の声が多く寄せられた。
現在も詳しい捜査が行われている。

■4年後に発覚! 裏口入学詐欺事件

 ご想像の通り、賄賂社会の中国では裏口入学は珍しくない。5月28日付の「新浪新聞」は、まるで小説のような裏口入学を報じている。中国屈指の名門大学・武漢大学に4年前に入学した(と信じていた)学生20人が卒業式間近になって、学籍さえも与えられていない、ただの大学部外者だと気がついた。

 事の発端は、4年前の裏口入学だった。当時、大学入試に失敗したある学生は、父親のコネで15万元(約300万円)の裏金を支払い、武漢大学への入学通知書を手に入れた。
武漢大学では経済管理を専攻し、仲介業者の手配により、大学院生用の宿舎も与えられた。授業前の出席確認も、自分の名前は呼ばれなかったが、仲介業者の「特別枠の学生だから」と言う、訳のわからない言い分を信じ、4年間を過ごした。その間も、学生証が発行されないことや、大学内の図書館にすら入れないことも仲介業者の巧みな話術で納得させられていたという。

 仲介業者には、毎年授業料や宿舎費の名目で1万5,000元(約30万円)を支払った。結果的に、4年間の青春を武漢大学の学生として過ごしたその男を含む20人は、卒業証明書が発行されなかったことでようやく自分たちがだまされていたことに気がついたのだ。日本では信じられない事件だが、それにしても裏口入学とはいえ、4年間を無駄にした彼らには少しばかり同情してしまう。


■最新カンニンググッズ

 かつて日本でも、カンニングをテーマにした映画がブームとなったことがある。中国では、小型電子化された最新のカンニンググッズがインターネットで販売されている。人気カンニンググッズ1位は、イヤホン型グッズ。外部からの音声電波を受信するためのものだ。数年前からこのイヤホン型が普及したが、バレないように小型化していった結果、耳の奥に入ったまま取り出せなくなった人も続出。中には、化膿して耳を切開した学生もいたというから要注意だ。


 続いて2位は、消しゴム型グッズ。外部からの電波をキャッチし、包装紙の下の液晶に、正解が表示されるという。3位はスマートウォッチ型の腕時計だ。こちらも外部からの電波をキャッチし、時計の液晶に正解が表示される。価格は200~600元(4,000~1万2,000円)と、お手頃だ。

 中国では、上記のカンニンググッズがネット販売を中心に飛ぶように売れている。
また、カンニング防止のための電波遮断機器や、金属探知機なども実際に試験会場で使用されることが多くなってきた。一方、今年はすべての試験会場で「Apple Watch」が持ち込み不可になったという。

 ドローンの監視やスマートウォッチの装着禁止でますますカンニングをめぐる状況が厳しくなる中、来年には新しいグッズが誕生するかもしれない!?
(文=青山大樹)