中国で、毎年900万人以上の受験生が挑む、大学入学のための統一試験「高考」だが、一方で問題となっているのが不正受験だ。

 昨年6月に行われた高考では、江西省南昌市内の試験会場で大規模な替え玉受験が行われ、42人が摘発された。

さらに、小型カメラや無線機など、ハイテク機器を悪用したカンニング行為も全国で報告されている。こうした中、河南省洛陽市の受験会場では、不正受験対策にドローンを投入。周囲で飛び交う不審な無線信号に、空から目を光らせた。

 同時に、不正受験を防止するための法改正も実施された。「光明網」(12月27日付)は、昨年11月1日に改正・施行された刑法により、国家試験でカンニンググッズの使用や替え玉受験を行った者は最高7年の懲役刑に処されることになったと伝えた。

 ところが、こうした厳罰化の成果は、今のところあまり見られていない。
法改正後、初めてとなる国家試験「中国全国大学院生試験」が12月26~28日の日程で行われたが、およそ11万人が受験した湖北省で、早速307人が不正行為を働いたとして摘発された。具体的な内容についてはまだ報道はないが、ネット上では替え玉受験や電子機器を使ったものではないかと推測されている。

 上海市内の大学で日本語の講師を務める日本人男性(45)は、中国で後を絶たない不正受験の背景について、次のように話す。

「農村出身の学生の場合、都市の大学に合格することは、都市部で社会保障を受けるための都市戸籍を手に入れる大きなチャンスであり、格差社会をよじ登るための必須事項のひとつ。『みんなやっているので、自分だけやらないのは不公平』と考える向きもある。今後も、命を懸けてでも不正受験する者は後を絶たないでしょう」

 それにしても、懲役7年のリスクを冒して不正受験するくらいなら、必死に勉強すればよいと思うのだが……。

(文=青山大樹)