連日行列ができ、予約をしようにもすぐにはできないお店や、頻繁には行かないけど地元で長く営業している老舗が、ある日突然「閉店」する。そんな経験があるはずだ。


閉店の知らせを知ったとき、ツイッターやフェイスブックでは、「あの店が閉店なんて」「残念だ」などの書き込みが増えるが、飲食店を経営する人はどう思っているのだろうか。


現役のバー経営者の男性が、飲食店経営者としての気持ちを綴ったコラム、「『予約が取れない店』が3年で閉店に追い込まれる理由」が5月26日にヤフー!ニュースに掲載され、賛否両論を巻き起こしている。


■「あの店が閉店なんて本当に残念」とツイートする人に「あなたが店に行かないからだ」



コラムを執筆したのは、渋谷区・宇田川町にあるバー「bar bossa」のオーナーである林伸次さん。知人が経営するバーの閉店に際して、飲食店の経営者としての気持ちを語っている。


同コラムは、2013年9月20日に「cakes」に掲載されている記事が元になっているようだ。


林さんはまず、飲食店が閉店する理由について説明する。


「バー経営者として言わせていただきますと、お店を閉める理由はただひとつです。お店にお客さまが来なくなって、売り上げが少なくなって、経営に行き詰まったからです」


さらに、「老舗の〇〇がついに閉店」というニュースがあると、ツイッターでは「え? すごく残念! あの名店がなくなるなんて!」という声が出てくるが、「そういう人を見ると、『あなたが店に行かないからだ』と言いたくなる」と不満交じりに気持ちを綴った。


そして、商店街のお婆ちゃんの店が潰れる一方で「日本中、どこまで行ってもコンビニだらけになる理由は、あなたがコンビニを頻繁に利用しているからです」と説明。その上で、「すごくいい店で閉店して欲しくないお店」を閉めさせないようにするには、「ちゃんと通えば良い」と強調している。


■「つぶれるのは客のせいじゃない」批判コメント続出


「閉店させたくないなら、ちゃんと通って欲しい」という林さんの意見に対して、ネット上では様々な意見が飛び交っている。


「言いたい事はわかるけど、文を読んでいるうちに、潰れるのはすべて客の責任と言われているような気がする」
「1回行けば十分な店だから潰れたのでは…としか思えないのだが」
「続けてもらうために通う"なんておこがましくてできない」


最も多かったのは、「店がつぶれたことを客のせいにするな!」という意見で、手厳しいコメントが数多く見られる。


一方で、閉店した側の立場を経験した書店店員は「(閉店して)『残念』とたくさん言われたが、『残念(という)言葉』じゃお給料はもらえないんだよなぁという気持ちはよくわかる」とコメントし、林さんの気持ちに同調を示すコメントもあった。


■店を一過性のブームではなく継続的にやっていくためには


このコラムを読んで、かつて飲食店舗のPRをしていた経験がある筆者(編集部S)は感じることがある。かつて予約が取れないほど繁盛していた店が、3年で閉店の憂き目を見たのは、「常連客」を大切にできなかったからではないかということだ。


店がメディアに取り上げられると、一時的に客が殺到して売り上げも上がり、店にとっては嬉しいことに思える。だがそれは一時的なことで、ブームが過ぎれば元に戻る。


そんなときに店を支えてくれるのが以前からの馴染みの客だが、大量の新規客来店の副作用として、その常連客が離れるというケースを見てきた。


押し寄せる新規客に店の意識が向いて常連客への対応が悪くなり、ファンが離れてしまうのだ。いつも行列ができていて、入りたいときに入れないのでは、嫌になってしまうのも人情だろう。そういうときに常連客に一言声をかけられるかどうかでも、心象は大きく変わってくる。


余談だが、筆者には2年ほど通っている喫茶店がある。立地は特段いいわけではなく、値段も安くはないが、何年も続いている。その理由は、その喫茶店が地域に「常連客」を多く抱え、大切にしているからだ。

中には1日に2 回通う人もいる。


このコラムを書いた林さんの気持ちはよくわかる。飲食業界は不況が続いているし、店舗存続のためには「お客が通ってくれる」ことは必要だ。しかし、店を長く続けるためには、定期的に新メニューを投入するなど、お客が通い続けたいと思うような店作りをするだけでなく、「常連客」を大切にすることが不可欠だと感じている。


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