コンプリート・シングル・コレクション『POWERS OF TEN』リリース。10年の想いを語る
| MY KEYS 2008 ~ピアノ弾き語りライブ in武道館~ | 2008.12.26(FRI) at 日本武道館 |
今年で3回目を迎えた、日本武道館でのピアノ弾き語りライヴ。前人未到の快挙は冬の風物詩へと表情を変えながら、今年も、アンジーとピアノと1万4千人のオーディエンスによる感動の一夜が刻まれた。
満面の笑みでステージに現れ、会場をぐるりと見渡しながらそのすべてを抱きしめるような仕草で一礼し、ピアノに向かったアンジー。1曲目は<信じる力が私を自由にする>と力強く歌われる「This Love」だ。観客のひとりひとりと心を繋ぐように、誠実に丁寧に届けられる言葉やメロディーが、なんだかとてもたくましい。緊張や興奮ももちろんあるのだろうけど、前回の武道館とも、夏の大阪城ホールとも違う安心感みたいなものがすでに伝わってきている。アウェイではなく、これは完全にホームの空気だ。
"LOVE SONG"をテーマに選曲されたというこの日のラインナップ。恋人への愛はもちろん、家族や友人に向けた想いもまた愛であり、そんな歌を入り口にして「心の冒険をしてほしい」とアンジー。確かに、愛する人への激情を綴った「大袈裟に愛してる」や、<本当の愛なら/愛する人を自由にした方がいい>という一節が深く問いかけてくる「One Melody」、自らの恋の終わりをモチーフにした「Rain」など、彼女の心が叫んだ愛の言葉は一瞬で時空を超えて飛び込んでくるし、ふるさとの月夜を連れてきたかのような照明が美しかった「HOME」もまた、それぞれの人生に語りかけながらそっと思い出の扉をノックしているよう。幸せが満ちていた時間だけでなく、胸の奥にしまい込んでいたはずの記憶までもが呼び覚まされるようで、心は忙しく過去と未来を行き来した。音楽を通し分の心とずっと会話していたような、不思議な感触。これも、歌がどっしりと真ん中にあるからこそ感じられた安心感からなのかもしれない。
そんな中で発表された2つの新曲は、どちらも命を題材にしたもの。来年2月に公開される映画「ヘヴンズ・ドア」の主題歌でもある「Knockin’ On Heaven’s Door」はボブ・ディランの原曲を独自の解釈で日本語に訳したもので、もうひとつの「レクイエム」は寓話の世界をベースにした「宇宙」や「モラルの葬式」にも通じる、4部構成の壮大かつスリリングなナンバーだ。この2曲は来年2月にリリースされるニュー・アルバム『ANSWER』に収録されることも発表され、会場から大きな大きな拍手が寄せられていた。
命の再生を思わせる躍動的な「Again」「MUSIC」と続き、本編の最後を飾ったのはもちろん「手紙~拝啓 十五の君へ~」。スクリーンに映し出されたアンジー手書きの歌詞を見ながら、お母さんに手を引かれてやってきた子供たちは未来を、その何倍もの時間を生きてきた大人たちは懐かしい時を想いながら、みんな本当に気持ち良さそうに大きな口を開けて歌っていた。アンジーの音楽を中心に、それぞれの心の冒険を経てひとつになった声と心。2008年を締めくくったその歌声は、きっと新しい年に向かう更なるパワーになっているはずだ。
取材・文/ 山田邦子