コンプリート・シングル・コレクション『POWERS OF TEN』リリース。10年の想いを語る
| コブクロ |
夏から始まった"CALLING"ツアーもいよいよファイナル。異様な熱気が開演前の武道館に立ち込めている。それもそのはず、この"CALLING"ツアーは一本一本が突出した内容を持ち、そのファイナルはコブクロの歴史に永く記憶されることになるだろうからだ。それを肌で感じているオーディエンスが、今夜は一体どんなライヴになるのかと、本当の意味での期待をそれぞれの胸に抱いて集まってきている。
映像がオープニングを告げると、シンセのアイリッシュ風のアルペジオが大音量で流れてきた。ドラムが入るのと同時に、まず小渕が「ウォー!」と雄たけびを上げる。迫力満点のバンド・サウンドに一歩もひけを取ることなく、黒田と小渕のハーモニーが響き渡る。武道館がちょうどいい大きさだと感じるほど、ふたりの声がスタンド席の僕に身近に聴こえてきた。
今回のセットリストの第一の山場は、最初の2曲。「サヨナラHERO」に続く「虹」で、ツアー・メンバーである4人のストリングスが登場。早くも小渕はアコースティック・ギターを抱えてステージを走り回る。彼らのレパートリーの中でも傑出した最新の名曲が、ツアーを通じて完全にふたりのモノになっていることを痛感させてくれるパフォーマンスだ。
鳴り止まない拍手の中、小渕は額に手を当ててぐるりと客席を見回して、もう一度「ウォー!!」と叫ぶ。「最後までよろしく」。ギターを置いてハンドマイクを持つ。「いよいよ、本日がファイナルです。昨日までの33公演はずっと半袖だったんですけど、今日は初めて長袖着てます。正装です」と小渕が言うと、「お前、緊張してるな」と黒田がさっそく突っ込みを入れる。「してる、してる(笑)。みなさん、ファイナルのお祝いに来てくれてありがとう。今回のツアーは本当に一本一本がそれぞれ完成していて、次のライヴは毎回また一から作ってきたんですけど、今日はその中でも"ツアーの完成形"にしたいので、みなさんの力を借ります」と小渕が今日の決意を表明する。そう、コブクロは全国の各会場で各地のオーディエンスと歌としゃべりでやり取りしながら、その日だけの"オンリーワン"のステージを作ってきた。抱腹絶倒のMCはもちろん、さまざまな要素が作り出す観客のグルーヴを受け止めて、すべてを歌に還す。アップテンポの曲はより楽しく、バラードはより感動的になる。そんなエネルギーの交感は、土地や観客によって異なるのだが、ふたりは日々それに反応して歌の姿を変えてきた。たとえばひとつの歌である歌詞がとても印象的に聴こえてくることがあるが、それは歌う側が聴衆から影響を受けてそうなることもあるし、反対に聴衆がある歌詞に敏感に反応するようなライヴの流れがあったりするからだ。どちらもお互いの信頼感から生まれる"ライヴの奇跡"なのである。コブクロはその奇跡を全国で展開してきた。小渕が「ファイナルなので、歌だけじゃなくて気持ちを届けにきました」と言ったのは、そんな奇跡の集大成への意欲なのだ。
この日の最初の奇跡は、日替わりで曲が変わる弾き語りコーナーの「そばにいれるなら」だった。インディーズ盤の『ANSWER』に収録されている片思いの切なさを歌った隠れた名曲のイントロが始まった途端、巻き起こった拍手とざわめきが、コブクロのふたりに柔らかな力を与える。♪先なんて見えない だから今日は ただよりそって♪というリリックが耳に突き刺さり、小渕のハープがまるで泣いているように聴こえて感動的だった。
さらには「To calling of love」。アルバムとは形を変えて"ツアー・バージョン"として歌われるこのバラードは、まさに今回のツアーで生まれ変わった一曲。そしてこの日の「To calling of love」は、完成形と呼ぶにふさわしい素晴らしい歌と演奏だった。終わって黒田と小渕が、満面の笑顔でハイタッチを交わしたのもうなずける出来映えだった。
そうした感動の歌と歌の間のおしゃべりが、この日はこれまた絶好調。しゃべりだしたら15分は止まらない。絶妙の会話のコンビネーションで、けっきょく、コンサート時間は3時間半に達し、ツアー最長記録となったのだった。って、どんな記録じゃ(笑)。
恒例のウェーブのシーンでは小渕扮する西條秀樹のヤングマンのバックに30人を超えるチアガールが登場したり、感動と笑いの交錯で、武道館はどんどん熱くなっていく。終盤の「轍-わだち-」で会場の明かりが全部つけられ、同じように感動している一万人の姿が目に飛び込んでくると、想いは倍加する。おそらくステージ上のふたりの高揚も、察してあまりある。
荒い息をつきながら、「何も言えねぇー!」と小渕。「今日は何かが違う。お客さんの顔も違う。そこから力をもらって、僕らも表情が変わっているかもしれない。忘れられないツアーになりました。いろんなものを身につけて、またみんなの前に現れたいと思います」。
身も心も熱くなったところで、アンコール。「黒田の歌のギターを弾かせたら、僕は日本一。僕のギターで歌ったら、黒田は日本一。これからも僕らの歌を聴いてくれる人とつながっていたいだけです」。ストリングスも再びステージに現われて、2曲を歌ってライヴは、そしてツアーは終わった。一期一会の全19曲は、これからもずっとオーディエンスの心の中で鳴り響き続けるだろう。
取材・文/平山雄一