アリーナツアー、幕張メッセ公演の模様をお届け!
| Hata Motohiro 5th Anniversary『HATA MOTOHIRO –LIVE AT BUDOKAN-』 | 2011.11.05(SAT) at 日本武道館 |
デビュー5周年記念日を3日後に控えた11月5日、秦 基博の姿は日本武道館にあった。この日は“5周年記念ライヴ”として全国3ヶ所で開催されたツアーの【HATA MOTOHIRO – LIVE AT BUDOKAN –】公演当日。開演前、バックステージにいるであろう秦の様子はわからないが、超満員の観客で埋め尽くされた場内は、開演時間が近づくにつれ熱気に包まれていった。
場内の照明が一度暗くなり、再び明りが灯されたステージには秦 基博がいた。ただ一人。黒のシャツにベスト、そしてネクタイという、いつもより少し正装した彼の出で立ちが、このライヴの“アニバーサリー感”を漂わす。ちなみに今回の公演は<Acoustic Session>と<BAND Session>の2部構成で行なわれたのだが、そのすべては彼がギターを手にし、慣れた手付きでサラリと弦に触れ、「ようこそ」と言って歌い出した「青い蝶」から始まった。
続く楽曲からは、ベース・FIREとの「やわらかな午後に遅い朝食を」、ギター・久保田光太郎との「夕凪の街」、ピアノ・伊東ミキオとの「風景」、パーカッション・正木健一との「dot」と、“秦 基博+1”という形でメンバーを迎えて披露。どの楽曲も、音数の少なさゆえのちょっとした緊張感がありつつ、とはいえ多くのレコーディングやライヴを共にしてきた者同士の息の合ったプレイで観客を魅了する。時折客席から飛ぶ「(5周年)おめでとう!」の声に「ありがとう」と答える秦も、終始リラックスした様子だ。
<Acoustic Session>後半の「バイバイじゃあね」では、前出のメンバーたちにドラム・矢野博康も加わり、この日のバンドメンバーがステージに全員集合。アコースティックならではの温もりと、アコースティックらしからぬグルーヴ感に満ちたその演奏は、後に控える<BAND Session>への期待を一気に高まらせる。
そんな客席の熱を一度冷ますかのように、続いて披露されたのは弾き語りによる「アイ」。円を描くオレンジの光の中央に一人佇む秦が、静かにイントロのフレーズをつま弾いた瞬間、客席から自然と拍手が沸き起こる。その拍手は彼が歌い出すのと同時に止み、そして最後まで誰もが一音、一声も聴き逃すまいと耳を傾ける。秦が放つ声やギターの音色だけでなく、心までもが、空間を伝わり肌に触れ、心に沁み入る素晴らしい演奏だった。その後「虹が消えた日」を演ったところで約1時間にわたった<Acoustic Session>は終了。
15分間のインターバルを挟み、再びステージに現われた秦はTシャツにジーンズといういつものスタイルに衣装替え。まずは「今日もきっと」で場を温め、「バンドで盛り上げていくので、みんな、よろしくお願いします!」と、その勢いをどんどん加速させていく。「フォーエバーソング」では、2階席最終列までいっぱいに詰まった客席全体を幾度も見渡しながら歌う姿が印象に残ったが、その心中は直後に語った「2年半ぶりの武道館…やっぱりいいね。楽しいね」のひとことに集約されていたように思う。聞けば武道館でのワンマンは2年半前以来、2度目とのこと。ここまで、あの広い武道館をまるで自分の“庭”のように手なづけていると思いながら観ていた筆者にとって、それは意外な事実であった(実際「本当? 数え間違いじゃないの?」と疑ってしまったほど。もちろんそんなわけないのだけど)。
その間にもステージはテンポ良く続いていく。メリハリの効いたサウンドと華やかなライティングで魅せた「SEA」「色彩」「赤が沈む」では、客席が揺れるほどの盛り上がり。秦も男気溢れる歌いっぷりで客席に応える。
そして「みんな、のど飴好きですか~?」の問いかけで始まったのは新曲「トラノコ」。この曲はカンロ『健康のど飴』のCMソングとして書き下ろされたもので、今回のツアーが初お披露目となったが、曲前にレクチャーしてもらった手拍子で観客も参加できるという心憎い演出によって、フル尺では初めて聴くにもかかわらずグッと身近に感じることができた。続く「キミ、メグル、ボク」からいよいよライヴも終盤戦。「トラノコ」で<「好き」と言えずにいた >と歌っていた彼が、「キミ、メグル、ボク」で<君が好きだよ>と歌う流れに秀逸さを感じつつ、その後も「シンクロ」「朝が来る前に」「鱗(うろこ)」というシングル曲のオンパレードで、<BAND Session>もあっという間にフィナーレを迎えた。
アンコールではオフィシャルグッズTシャツを着て登場した秦。「コレ…Lサイズです」と、観客を笑わせるのも忘れないのがなんとも彼らしい。ここで披露された弾き語りによる「僕らをつなぐもの」、再びバンドメンバーを招き入れての「花咲きポプラ」、そして最新シングル「水無月」からもわかる通り、今回の公演は秦 基博5周年の集大成であり、“いいトコ取り”の内容で行なわれた。それは彼の音楽生活を辿ると同時に、観客それぞれが自分と秦との出会いから現在までを辿る時間でもあっただろう。私自身がそうだったように―。
2009年3月6日、初めて立った日本武道館のステージで「今日が始まりでもあると思う」と語った彼は、それから2年半後の2011年11月5日に再びそのステージに立ち、何度も「みんなに会えて本当に幸せです」と喜びを口にし、「僕のただ一つの目標は“ずっとずっと歌い続けていくこと”。みんな着いてきてください!」と力強く語るまでになった。また、彼が「変化をしながら一瞬一瞬を切り取ってきたと思う」という楽曲たちは、出会った瞬間から私たちの“一瞬一瞬に寄り添ってくれる”楽曲でもある。これのどこに「着いていかない」なんていう選択をする余地が残されているのだろう? もう「付いていく」しかないのである。ステージを去る前、照れながら「また会おうね」と言った彼の言葉に「必ず会いに来るよ」と答えたのは、おそらく私だけではないはずだ。
(取材・文/片貝久美子)