とかく「コスパ」だの「タイパ」だのと言われる今日このごろ。フランスを代表する知識人が、文学の意義を多方面から説く。
文学がすぐ役に立つわけではないし、文学だけで食べていくのは難しい。「筆一本で生活できる作家はほとんどいません」と著者は断言する。それでも長期的に見れば必ず「割に合う」。このことを著者は、ボードレールやプルーストから最近のオーディオブックまで、さまざまな作家や作品、自身の経験をもとに説く。
たとえば、「普及することになった経済学的・社会学的概念は、およそほとんどが文学的・詩的なものです」と著者は述べ、「セレンディピティ」や「ブラック・スワン理論」といった概念を挙げる。画期的なアイデアを思いついても、それを言葉にできなければ伝わらない。言葉を磨くのが文学であり教養だ。
「教養がある者は、自らの人生の作者となります」という言葉がしみる。
【書き手】
永江 朗
フリーライター。1958(昭和33)年、北海道生れ。
【初出メディア】
毎日新聞 2026年8月8日
【書誌情報】
文学は割に合う!著者:アントワーヌ・コンパニョン
翻訳:本田 貴久
出版社:作品社
装丁:単行本(248ページ)
発売日:2026-03-30
ISBN-10:4867931268
ISBN-13:978-4867931264