◆ユーモアたっぷりに文学語る
作家であり、フランス語圏文学の研究者である小野正嗣、初のエッセイ集である。
あまり大声では言えないが、小野さんは快活な人である。
できれば彼のキャラの面白さが発揮された文章を読んでみたい、とつねづね思っていた。そしてエッセイにはそれが存分に示されていると思う。楽しい読書だった。
なによりも、「浦からマグノリアの庭へ」という、表題にもなっているエッセイから読まれたい。
大分県の「浦」のついた土地に生まれ、東京の大学へ進み、フランスへ留学し、小説を書く。郊外に留まり、「暴動」を呼吸する。そうした一連の流れが、独特の諧謔(かいぎゃく)を伴って記述されている。幾度も腹を抱えて笑った。また、不意を突かれて考え込んだ。
これだけ広範な知識を有し、自在に文学を語ることができる人間が、いまどき他に何人いるだろう。
【書き手】
陣野 俊史
1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロージョン』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)など。
【初出メディア】
日本経済新聞 2010年9月15日
【書誌情報】
浦からマグノリアの庭へ著者:小野 正嗣
出版社:白水社
装丁:単行本(261ページ)
発売日:2010-08-25
ISBN-10:4560080860
ISBN-13:978-4560080863