髙嶋政伸氏。めっちゃいい人を演じることもあれば、クセのある役で強い印象を残すこともある名優だ。
あるドラマで、著者は娘に性的暴力をし続けるという父親の役を演じていた。私もそのドラマを見ていたのだが、全身が硬直してしまうくらい気持ちが悪く、最悪に傲慢な男だった。フィクションとわかっていても見ているのが辛くて「許せん!消えろっ!」と本気で憎しみを覚えてしまったくらいだ。エッセイには、問題のシーンを撮影するにあたり、著者がインティマシーコーディネーターを入れることを強く希望したということ、演じる前にどんな準備をして何を考えたのかが丁寧に書かれていて、俳優というのはそこまでやるんだなあと、驚きとともに尊敬の気持ちを抱いたのだが......。
大物俳優の父に関する驚愕のエピソードに、思わずウゲッ!と声が出るところからこのエッセイはスタートする。何がどうっていうのは書かないほうがよさそうなので、ぜひご自身で読んでみてください。なんか思ってたのと違うかも......と戸惑いつつも、ユーモラスで軽快な文章は親しみやすく、ちょっと(いやかなり)風変わりだけれど愛情深いご両親のエピソードも愉快で、読み進めるほどに髙嶋政伸という人に対する興味が増していった。
ジョン・レノンまで登場する著名な人々との交流や、懐かしいドラマや映画の話などの華やかな話は眩しく、学生時代に自主制作映画を撮影して多額の借金をしてしまったことや、座敷わらしに会う(!)などの不思議な経験には驚かされる。一方、テーマパークで家族のために走り回ったり、学芸会に出る息子を指導したりといった温かい時間は、普通のお父さんのようだ。
髙嶋政伸という人にはいろいろな顔があるみたいだけど、どんなことを書いていても品のあるユーモアと生真面目さが漂う。そのいろいろな顔で、ぜひエッセイストとしても、活躍していただきたいなあと思う。
(高頭佐和子)