その優しく温かい世界観が読者の圧倒的支持を得、2019年には石井裕也監督の手により実写映画化もされた安藤ゆきのマンガ『町田くんの世界』。2024年にミュージカル化されると、第49回菊田一夫演劇賞(ウォーリー木下の演出に対して)を受賞するなど大反響を集めた本作が舞台に帰ってくる。
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◆初演メンバーほぼ再集結がうれしい
物静かでメガネ。そんな外見とは裏腹に成績は中の下。アナログ人間で不器用…なのに運動神経は見た目どおりの町田くん。そんな町田くんが周りのみんなを変え、みんなに愛されていく本作。
ミュージカル版では、演出のウォーリー木下、脚本のピンク地底人3号、音楽の和田俊輔が心温まる原作の世界観を見事なまでに舞台に落とし込んだ。主演の川崎、猪原さん役の長澤樹をはじめ初演メンバーがほぼ再集結し、さらなる進化を遂げた『町田くんの世界』を届ける。
――再演が決まったと聞いた時のお気持ちはいかがでしたか?
川崎:実は初演の大阪公演千穐楽直後くらいに「お願いできる?」とお話がありまして、「ぜひ!ぜひ!」とお答えしていたんです。この2年「また観たい」と言ってくださる声も届いていましたし、やっと!という感じがあります。
――再演発表時のコメントに「僕にとって特別な作品」とありました。
川崎:作品が持つ魅力もそうですけど、まずは前回の公演がぶっちぎりで楽しかったっていうのがあって。すごくいいカンパニーだし、本当いい作品、いい音楽で、僕がこの作品に対してすごく魅力を感じているのが大きいですね。
ファンの方や、周りのジュニア、先輩から素敵な感想をたくさんいただいた記憶もすごく強いです。
――前回の稽古や本番で特に印象に残っていることはありますか?
川崎:本当に全員がしっかりと向き合わないと成立しないのがこの作品で。各々が自分の役を考えればいいわけじゃなくて、いろんな役を演じたり、場面転換を担当したりするというのもあるんですけど、普段の稽古にも全員がそろっているんですよね。稽古の1ヵ月をかけてどんどんチームワークというか、団体としてのパワーがすごく高まっていったなというのが印象的でした。
あとは、吉野圭吾さんが結構むちゃくちゃなんですよ(笑)。猪原さんと町田くんが芝居している裏でそれぞれの芝居をやっていると、毎回違うみんなのアドリブの芝居が聞こえてくる(笑)。町田くんはそういうアドリブに入れないので、すごく自由に楽しんでいるのが羨ましかったです。
――今回はそのメンバーがほぼ再集結します。
川崎:めっちゃうれしいですね。やっぱりこのキャストだからこその空気感があっての初演だったと思うので、それを引き継いでいけるというのはすごくうれしいし、一度関わってくれた皆さんがまたぜひ!と思ってくれる作品に、僕も入れてよかったな、うれしいなっていう気持ちがすごくあります。
◆2年間で得た知識が「町田くん」にどう影響するか心配
――初演から2年が経ち、川崎さんご自身も成長したり変わったりした部分があると思いますが、ここはパワーアップできそうかな、もっと深められそうかなと思う部分はありますか?
川崎:パワーアップはしていたい、いや、していなきゃいけないなって思います。前回は今よりも経験がなかったですけど、この2年でいろいろな作品に出演させていただいていますし、お芝居、歌も含めてグレードアップしていなくちゃいけないなと思います。
でも、本当にちょっとですけど、前回はフラットな状態で飛び込んでいたから良かったと思われたんじゃないかというのも、少しよぎっています(笑)。技術が少なかったからこそ、町田くんとして、皆さんに影響されて成長していく主人公を演じることができたんじゃないかなと。再演にあたってそこが若干気になっていますね。実際に稽古をしてみて、前回の感覚を思い出せるのか、新たにアプローチし直さなきゃいけないと思うのか、やってみなきゃ分からないですけど、どうなるんだろう?という気持ちがあります。
ただ、この2年の間に得た知識を元に新たに町田くんにアプローチできると思えば、それも再演の魅力になると思うので、今の僕で町田くんをいいものにしたいなっていう気持ちで頑張りたいと思います。
――初演では、ミュージカルならではの難しさや面白さはどんなところに感じましたか?
川崎:町田くんとして歌うって難しいんだっていうのがありました。町田くんはたぶん歌わない人なんですよね。でもミュージカルだから歌うし、それに違和感はないんです。でも、町田くんとして生きていて急に歌い出すのって、やっぱりどこかで違和感が生じてしまう気もしていて。それを落とし込むのは、複雑だけど面白いなってすごく思いました。
『町田くんの世界』の作品の魅力はかなり音楽に起因してるところが大きいと感じています。感情がまんま歌詞になってるというか、歌になっている“にじみ歌”って呼んでいるものがあるんですけど、普段だったら絶対に歌詞にならない言葉が音楽になるんですね。
前回は稽古しながら生まれていくといいますか、元々音楽の予定じゃなかったけど、ここ歌ってみようというので、和田さんがその場でコーラスを作ることもあったり。曲に限らず、僕たちが思ったことやウォーリーさんが見ていて思ったこと、和田さんが見ていてこうキーを変えた方がいいなと思ったことなど、全部その場で完成していったのが前回の『町田くんの世界』だったので、そのリアルタイムなライブ感は稽古場で本当に楽しかったです。稽古を重ねるにつれてハーモニーがすごくきれいに決まると、やっぱり僕の感情もすごくきれいに変わるんですよね。
そんな最高の音楽を作っていただいているからこそ、それを歌として届ける僕たちが、そこでつまずくようなことはできないなっていうプレッシャーもありますね。
◆『AmberS』を通して座長として大切なことを学んだ
――再演にあたり演出のウォーリーさんからは何かお話はありましたか?
川崎:「最近はどうなの?」と僕の近況を聞いてくださったり、先日まで出演していた『AmberS-アンバース-』も観に来てくださったりと、ざっくばらんにいろいろとお話させていただきました。やっぱり演出家として、『町田くんの世界』について格別に造詣が深いというか、ちょっと話しただけでも、本当にこの作品のことを大好きでいてくださってる印象があります。
「真っすぐ僕が思った町田くんをやってくれていてそれが良かった」と言ってくださって。だからこそこの2年がどう響くんだ?というのはありますね。変に小手先になると一番良くないので難しいですが、初心に返ってもうみんなに任せる!という感じにしたいなと思ってます。
――前回は町田くんという人物像について、ウォーリーさんと何かやりとりはありましたか?
川崎:実はほとんどなくて。他のキャラクターは「もっとこうするといいかもね」とキャストとのやり取りの中で形成されていったんですけど、町田くんはそれが1回もなく、周りの人の変化に僕が乗っかって、どんどん変化していった節がありました。
――それが町田くんらしさにつながったのかもしれませんね。
川崎:そうですね。町田くんは一見いろんな人に影響を与えているように見えるけど、町田くん目線でいうと影響を与えているつもりは全くなくて。上演時間の2時間かけていろんな人に与えてもらった影響を受けて成長していくのが役割なので、皆さんからいろいろ受け取るというお芝居はこれで覚えたっていうぐらい、周りの皆さんにすごく助けていただきました。
――そんな頼もしい皆さんをまとめる座長という立場になりますが、座長として大事にされていることはどんなことでしょうか。
川崎:これ難しいんですよね。特別なことをしているつもりはないんですけど…。
『AmberS』をやった時に(なにわ男子の)大橋(和也)くんの存在がすごく大きくて。(timeleszの)寺西(拓人)くんとのバランスが素晴らしく、技術面でとっても安定している寺西くんが芝居を引っ張ってくれて、現場が大橋くんのおかげで明るく柔らかくなるみたいなことを経験したんです。
僕も『町田くんの世界』しかり、その前には『ロミオとロザライン』、この2年の間にも『サマータイムマシン・ブルース』『2FATE~二つの心と一つの夢~』と主演の立場を経験させていただいていますが、「皇輝が主演だから雰囲気が良いんだよ」と言ってもらえることがあって。僕は人としゃべることが好きだし、人懐っこいとよく言っていただき、カンパニーの会話の中心にいたりすることもよくあるのでそうなのかな?と思っていたのですが、『AmberS』の現場を経験してそうなのかも!って思いました。主演の空気ってこんなに作品に直結するんだとすごく感じたので、逆に今回変な気の張り方をしそうで怖いです(笑)。
――よく知った皆さんがそろわれますから大丈夫ですよ!
川崎:初めての劇場で、新作で、先輩2人がいて、という初めて尽くしの『AmberS』の後なので本当に安心します(笑)。みんな僕のことを知ってくださっているし、安心感が桁違いですね。作品を観に行ったり、観に来てくれたりと繋がりは続いていて、浜崎香帆さんとは『ABC座』でも一緒で地続き感のあるメンバーもいますし、変わらずにきっと大丈夫かなと。そこに今回から参加してくださる原田真絢さんも加わって。新たに仲間が増えるのはうれしいので、どんな『町田くんの世界』をお届けできるのか、本当に楽しみにしています。
(取材・文:近藤ユウヒ 写真:高野広美)
ミュージカル『町田くんの世界』は、7月7日~30日東京・シアタークリエにて上演。
※川崎皇輝の「崎」は「たつさき」が正式表記

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