コペンはダイハツから販売されている電動開閉式ルーフ「アクティブトップ」を備えた軽自動車の2シーターオープンのスペシャリティモデル。そのレアな存在ゆえにファンの多いモデルだが、今年の8月下旬に現行モデルの生産終了が発表されている。
●WRCラリージャパンは2度目の参戦となる相原泰祐・上原あずみ組
コペンがラリージャパンへ参戦するのは今回で5回目。2025年大会では拡幅したボディに1リッターKRエンジンを搭載し、今後の小型スポーツモデルとコペンの可能性を模索するために製作された魔改造マシンでの参戦だったが、今回は原点回帰して660ccのノーマルエンジンで臨んだ。ベースは現行のコペンGRスポーツ(5MT)。このカタログモデルにレギュレーションに則った安全装備と過酷なラリーを走り切るためのチューニングパーツを加えての参戦となった。
主だった装備はFIA認証取得したロールバーや45Lの安全燃料タンク、WRC参戦用に開発された4POTフロントブレーキ+専用ローター、ショックアブソーバー+スプリング。タイヤはFIA認証取得済みのADVAN A051T 195/50R15。エンジンはノーマルと同じ660ccのKF型だがD-SPORTのスポーツECUにより最高出力は約80ps、最大トルクは約11kg・mとアップしている。
●市販のコペンと同じKF型660ccエンジンだがD-SPORTのスポーツECUにより80psを発生する
●リヤには安全燃料タンクやスペアタイヤが収まる。市販車ではオープン時にルーフが収まるスペースとなるためコペンのトランクは実はかなり広い
●タイヤはFIA認証取得済みのADVAN A051T 195/50R15
ドライバーの相原泰祐氏によると、排気量を拡大した昨年のマシンに比べパワーこそ劣るものの重量が軽く小型のKF型はノーマルの搭載位置でも重心が低くなり、ブレーキングの負担も少なく旋回スピードも維持できるという。
もちろん、それでもタイトターンの続く峠道も多い日本のSSで10~20kmもの距離をノーマルに近い軽自動車で走り切るのはやはり過酷な挑戦だ。ましてや、これまでの11月開催と違い初夏に変更された今年の大会は路面温度も高くADVANのハイグリップタイヤの性能も相まって駆動系をはじめマシンへの負担は桁違いに大きい。
空気の流れをブレーキに導入するため下部の形状を工夫するなどクーリングに関しては可能な限り対策はしているものの、ラジエターすらノーマルのコペンにとって3日間晴天に恵まれた今大会の暑さはあまりに過酷だった。市販車と同じシステムを備えているゆえにSSアタック中には水温が上がりエンジン保護のための制御も入ることもあったという。このクルマを労わる保護機能は一般ユーザーには必要不可欠な装備だが、タイムアタック中に介入されるのはドライバーとしては歯がゆかっただろう。
●ラジエターもインタークーラーもノーマル。ナンバープレートの右側に見えるのはエアコンのコンデンサ。まるでチューニングパーツのように見えるD-SPORT Racingのロゴはスタッフの遊びゴコロ。ダイハツの前進 発動機製造株式会社が1907(明治40)年に大阪で創業した歴史が黄色いナンバープレートに記されている
●マシンへの負担が大きいタイトターンの続くコースを攻めるコペン
じつは、相原氏はダイハツGAZOO Racingで製品企画を担う技術者。1日の走りを終えサービスパークに戻っても、市販車も制御プログラムを見直してもっと熱に強い仕様にできないだろうか・・・などとモゴモゴ。モータースポーツで得られた知見を量産車にフィードバックとはよく耳にするセリフだが、D-SPORT RACINGは開発者自身がステアリングを握っているのだから話が早い。
そういえば国内ラリー参戦で得たさまざまな知見を盛り込んだミライースtuned by D-SPORTの販売をダイハツが実現してしまったのはほんの3ヶ月ほど前の話だ。さすがにコペンtuned by D-SPORTとはいかないかもしれないが、ダイハツが今年8月の現行コペン生産終了のコメントをリリースした際に「再びコペンを世の中に送り出せるよう、様々なスタディを続けております。」と記載されていたことを考えれば、このラリージャパンへの挑戦で得られた知見は次期コペンの走りに大きく寄与するのだろう、と妄想してしまう。
●ダイハツのディーラーメカニックも参加しコペンの走りを支えた
●ドライバーの相原泰祐選手、コ・ドライバーの上原あずみ選手ともに「今年は沿道で応援してくれるコペンファンが今まで以上に多く、コペン好き同士のつながりを感じとても励みになった」と語った。美しい川沿いのリエゾンを連なって走行するシーンも見られた
昨今の自動車はさまざまな自動化と安全という名のもとにより大きく重くなっているのは否めない。もちろん安全はクルマにとって最も大切な要素であることに異論はない。ただし走る・曲がる・止まるという運動性能の基本を考えれば軽さは正義だ。しかも車両価格、メンテナンスコストなどさまざまな面でユーザーの経済的負担も軽い。今や軽自動車は国内販売の4割を占める大きなカテゴリー。それだけにD-SPORT RACINGの挑戦を見ていると、走る楽しさを目一杯詰め込んだ軽自動車や小型車のニューモデルの登場に期待は膨らんでしまう。
〈文と写真=高橋 学〉

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